おかしい人々の物語――『誰が死んでも同じこと』著者新刊エッセイ 円居挽

エッセイ

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誰が死んでも同じこと

『誰が死んでも同じこと』

著者
円居, 挽
出版社
光文社
ISBN
9784334911904
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

おかしい人々の物語

[レビュアー] 円居挽(作家)

 最近は歳を取ったせいか、他人様(ひとさま)の行動原理に興味を持ち始めました。特にその行動が利害を度外視した不可解なものなら一層面白く感じ、「なんでこの人はこんな意味のないことをしてるんだろう」と仕事そっちのけで観察してしまったりします。

 それにしても人というのはまことに複雑怪奇です。不可解な行動が極めて複雑なロジックから発生している場合もあれば、当人はシンプルなロジックで動いているのに、その実態が解らないから不可解に見えているだけの場合もあります。しかしいずれにせよ、理由は存在しています。そういうものを解明できたらさぞ気持ち良いとは思いませんか?

 さて、宣伝です。拙作『誰が死んでも同じこと』には河帝(かみかど)家という資産家が登場しますが、彼らもまたある種のロジックに支配された人々です。そんな一族を突然、不可解な連続殺人事件が襲います。

『誰が死んでも同じこと』は「何故彼らは殺されなければならなかったのか?」という謎を軸に、真犯人とその動機を追う物語です。

 また、おかしいのは河帝家の人間だけではありません。主人公である十常寺迅(じゅうじょうじじん)も余人には理解できない行動原理で動く男です。彼が何故熱を持ってこの事件を追うのかということも物語の横軸になっています。言ってしまえばおかしい人間たちが織りなす不可解な謎を自分のおかしさに自覚的な主人公が追うという構図ですかね。

 現実の人間の不可解な行動にロジカルな説明がつけられることはあまりありませんが、「せめて自分の書く小説の中ぐらいは」ということでホワイダニット色強めに仕上げてます。お楽しみいただけると幸いです。

光文社 小説宝石
2017年11月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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