『答えのない世界を生きる』 小坂井敏晶著

レビュー

5
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答えのない世界を生きる

『答えのない世界を生きる』

著者
小坂井 敏晶 [著]
出版社
祥伝社
ISBN
9784396616175
価格
1,944円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『答えのない世界を生きる』 小坂井敏晶著

[レビュアー] 稲泉連(ノンフィクションライター)

 パリ第八大学心理学部で教鞭(きょうべん)をとる著者は、自らを「異邦人」と呼ぶ。20代でアルジェリアに職を求め、1980年代初頭からフランスへ。本書はそうして社会心理学の道に進んだ一人の学者が、いかに全身で学び、思索してきたかを描いた自伝的思想書、と言えばいいだろうか。

 知識や学ぶことの意味を論じた第一部では、社会の常識を壊しながら、それを絶えず作り直していく姿勢の重要性が説かれる。ある共同体の内部にも外部にも属さない「異邦人」の視点とは、その「常識」と闘う武器になるのだ、と。古今東西の思想家や科学者などの言葉と逸話のパッチワークが、次第に一つの大きな像を結んでいくような刺激的な読書体験だった。

 そして、何といっても引き込まれるのは、そうした「異邦人」としての視座が、どのように培われたかを回想する第二部だろう。迷いと葛藤の中にある若い魂が、「世界」を懸命に吸収しながら一つの思想を必死に作り上げていく。火傷(やけど)しそうなほどの情熱で学ぶことと向き合い、いまなお「思想の戦士」でありたいと語る孤高さに胸が震えた。

 祥伝社 1800円

読売新聞
2017年10月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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