チームの関係性に悪影響を与えてしまう「アンコンシャス・バイアス」とは?

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チームの関係性に悪影響を与えてしまう「アンコンシャス・バイアス」とは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

人の「解釈」は、それぞれ異なるもの。同じものを見たり、聞いたりしても、各人が違った印象を抱くわけです。しかも厄介なのは、私たちの解釈の多くが、自分に都合よく曲げられているものだということ。そして自分にとって都合のいい解釈は、「無意識」にできあがっているものでもあります。

しかし無意識は、私たちの言動、感情、コミュニケーションなどに、知らず知らずのうちに大きな影響を及ぼしている──そう指摘するのは、『あなたのチームがうまくいかないのは「無意識」の思いこみのせいです―信頼されるリーダーになるたった1つのこと』(守屋智敬著、大和書房)の著者。これまでに、研修講師として2万人以上のリーダーの育成に携わってきたという人物です。

どんな人も、自分なりに「よかれ」と思って日々行動しています。

しかし、それが裏目に出てしまうことも多々あります。それはなぜでしょうか?

この原因が、本書のテーマである「アンコンシャス・バイアス」です。

「無意識の思いこみ」「無意識のとらわれ」「無意識の偏見」などと訳されていますが、本書でお伝えしていくこのアンコンシャス・バイアスをわたしたちはみなもっています。(「はじめに」より)

そして、著者が特に注目しているのは、リーダーにとっての無意識のあり方です。リーダーは、メンバーに対して大きな影響力を持っているもの。つまりリーダーとして「自分にも思いこみがある」と気づけるかどうかは、組織の発展や、成果を生み出すためにはとても重要だということ。そこで本書では、著者がリーダーに伝えたい「無意識の影響」について多くのページを割いているのです。

無意識の思いこみを、完全に払拭することは不可能です。無意識なので、気がつきにくいからです。しかし、周囲の反応や態度を見ていれば、今の言動が相手に良い影響を与えているのか、ネガティブな影響を与えているのかは、わかるようになります。

大切なことは、それに気がつき、意識できる範囲で、ちょっとでも変わろうとすることです。もっとも厄介なのは、変われないことではなく、リーダーが自ら変わろうとしないことです。(「はじめに」より)

序章「無意識の世界を知ることで、人も組織も変わる」のなかから、基本的な考え方を抜き出してみましょう。

誰もが無意識のうちに偏ったモノの味方をしている

著者はまず、以下のような日常を送っている人に対して、どのようなイメージを抱くかを読者に問いかけています。この人物のイメージを、性別、職業、年齢、家族構成など、できるだけ具体的に、素直に、直感に従って頭に描いてみてほしいというのです。

6:00 → 起床

6:30 → 朝食の用意

7:00 → 洗濯ものを干し、出かける準備

8:00 → 仕事に出かける

18:00 → 帰りがけに夕食の希望を家族にメールで確認「なに食べたい?」

19:00 → スーパーに立ち寄って買い物

19:30 → 帰宅して、夕食の用意

20:00 → 夕食・団らん・後片づけ

21:30 → 翌日の準備・洗濯ものをタイマー

22:00 → 読書・日記(ひとり時間)

23:30 → 就寝

(19ページより)

よく聞く答えは「子どもがいそう」「働いている女性で、家庭と仕事を両立していそう」というものなのだとか。しかし、意外なことにこれは「47歳、男性、共働き夫婦、仕事は研修講師」という著者自身のスケジュールなのだそうです。

つまり著者がここで伝えようとしているのは、「私たちは知らず知らずのうちに、偏ったものの見方をしていることがある」ということ。自分でも気づかないうちに、過去の経験などを通して「きっとこうだろう」と信じ込んでしまいがちだということです。

このように、無意識のうちに偏ったものの見方をしてしまうことが「アンコンシャス・バイアス(unconscious bias)」。ひとりの「違い」を大切にしながらチームや組織を導きたいと考えるリーダーは、アンコンシャス・バイアスの存在とその影響力を知ることが大切だというわけです。(18ページより)

アンコンシャス・バイアスとは?

近年、多くの企業で「アンコンシャス・バイアス(無意識の思いこみ)」をテーマとした研修・講演・ワークショップが実施され、大きく注目を集めているといいます。実例としてよく知られているのは、「男性だから」「女性だから」「理系だから」「文系だから」「関西出身だから」「ひとりっこだから」「AB型だから」といった、ステレオタイプな決めつけをしてしまうこと。

なお「アンコンシャス・バイアス」には偏見だけでなく、もっと広い意味があるのだそうです。

「これまでに成功し続けてきた私の判断は、常に正しい」というような成功体験や、「私は以前こんな失敗をした。だから今回もダメなはずだ」といった失敗体験のように、過去にとらわれた言動もアンコンシャス・バイアスのひとつだというのです。

同じように、「少しくらいの遅れなら問題ないだろう」「この程度のミスなら報告しなくても大丈夫だろう」というように、慢心した考えを持ってしまうのもアンコンシャス・バイアス。

自分自身はこのような考えや行動について、「大きな問題ではない」と思っていたりするもの。ところが結果的には、それがもとでメンバーを傷つけてしまったり、状況判断を誤ってしまうこともあるわけです。

著者によればそれは、脳が「あれこれ考えることを避け、意識しなくても状況に対する判断を自動処理するようにできている」ため。いってみれば脳がラクをしようとしても無意識のうちに勝手な判断をしてしまうということです。

メンバーがイキイキと働いていない、イノベーションがなかなか起きない、組織の風土改革が進まないなどといったリーダーの悩みの原点に、こうしたアンコンシャス・バイアスが潜んでいるというのです。(22ページより)

「相手に譲ると損をする」という思いこみ

私たちがとらわれやすいアンコンシャス・バイアスの例として、著者は「どうしても相手に譲れない」と思い込んでしまうバイアスを挙げています。たとえばリーダーとメンバーの意見が衝突したとします。そんなとき本来なら、お互いの意見をぶつけ合った上で、合意するところを探せばいいはず。ところが、そうはならないことが多々あるというのです。

「譲るとなめられる」「簡単に譲歩すると中身のないやつだと思われる」「バカにされたくない」「自分のほうが正しいに決まっている」「負けられない」などといった感覚が強まって、徐々にやりとりが感情的にエスカレートしていくというケース。その結果、必要以上に関係が険悪になっていくこともあるかもしれません。

これは、「限定パイの法則」と呼ばれるアンコンシャス・バイアスなのだそうです。これは、無意識のうちに「大きさの決まっているパイを取り合っている」かのような錯覚にとらわれるバイアス。無意識のうちに「譲歩する=自分の取り分が減る」という感覚が強まり、その結果、必要以上に「絶対に譲れない」「負けられない」と思い込んでしまうということ。

しかし、もしもリーダー、メンバーの双方がこのアンコンシャス・バイアスにとらわれ、お互いに「絶対に譲れない」と決めてしまったとしたら、ただ人間関係が悪くなるだけ、メリットはなにひとつないわけです。

ここで重要なポイントは、「現実には奪い合うものなどなにもない」ということ。その証拠に、冷静に考えてみれば、「なにを競っていたんだろう」「どうして意地を張ってしまったんだろう」とすぐにわかるはず。ところが会話の流れのなかで、とっさに自分を守ろうとするアンコンシャス・バイアスが働くため、わからなくなってしまうというのです。

でも、奪い合いがお互いのなかに生み出すものは、ただ不快感だけ。このバイアスは、チームで成果を生み出そうというとき妨げになってしまうということです。(28ページより)

このような考え方を軸に、以後の章では「価値観の違うメンバーと信頼関係を築く方法」「メンバーの価値の高め方」「無意識の壁の乗り越え方」など、チームに好影響を与えるために必要なメソッドがわかりやすく解説されています。チーム運営について悩んでいるリーダーは、目に通してみてはいかがでしょうか。

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2017年10月31日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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