『日本の新宗教』 島田裕巳著

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日本の新宗教

『日本の新宗教』

著者
島田 裕巳 [著]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
哲学・宗教・心理学/宗教
ISBN
9784041052525
発売日
2017/09/22
価格
1,836円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『日本の新宗教』 島田裕巳著

[レビュアー] 納富信留(ギリシャ哲学研究者・東京大教授)

社会との関わり明らかに

 今年の11月9日で大政奉還から150年を迎える。幕末・明治から1世紀半、日本はどんな道をたどってきたのか。人々は何を経験し、何を感じながら生活してきたのか。新宗教を見る目はその裏面を追っていく。

 「新宗教」とは、新興宗教とも呼ばれる、幕末・明治以降に成立した神道系・仏教系の諸宗教のこと。いつ誰がその宗教をはじめ、どんな人々に受け入れられて発展したのか、衰退したのか。長年この研究に従事してきた著者が、歴史的事実と全体像を淡々とした筆致でつづる。その流れは国家神道の成立に始まり、オウム真理教で終わる。象徴的な枠組みである。

 紹介される30を超える大小さまざまな新宗教には、私もどこかで名を聞いたことのあるもの、知り合いが関わっていたものもある。だが、それらの成り立ちや実態をほとんど知らなかったことに気づいて驚く。宗教は人前であまり語らない微妙な話題であり、内面の弱さをおおう陰の部分なのかもしれない。だが、そこで教祖や教義や組織に集う人々が動かしたなにかが、表舞台でではないにしても、確かに日本文化を形作ってきた。その事実に冷静に向き合うこと、歴史を振り返ることが、時代の節目にあたる現在、求められている。

 経済が発展して農村から都市に働き手が流入する時期には、根を失った庶民が心の拠(よ)り所を求め、現世実利を売り物にする新宗教に入信する。高度成長が鈍ると終末論や超能力がブームになり、地下鉄サリン事件に至る。新宗教は戦前にはしばしば国家権力と対立して弾圧されたが、そこには明治政府が作り上げた国家神道という体制の影がつきまとう。

 新宗教の歴史から、日本人の心性とともに宗教心と社会の関わりも見えてくる。著者はそれらが近年概して衰退傾向にあると分析する。新宗教はこれからどんな道を歩むのか。明治150年の後、私たちが直面する問題である。

 ◇しまだ・ひろみ=1953年東京生まれ。宗教学者。『戦後日本の宗教史』『葬式は、要らない』など著書多数。

 角川選書 1700円

読売新聞
2017年10月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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