刊行記念エッセイ・矢崎存美 NNN(ねこねこネットワーク)の陰謀

エッセイ

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NNNからの使者

『NNNからの使者』

著者
矢崎 存美 [著]
出版社
角川春樹事務所
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784758441254
発売日
2017/10/16
価格
616円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

刊行記念エッセイ・矢崎存美 NNN(ねこねこネットワーク)の陰謀

[レビュアー] 矢崎存美(作家)

 十月に『NNNからの使者』という新刊をハルキ文庫から出させていただきました。
「NNN」は「ねこねこネットワーク」と読みます。そのかわいらしさ、愛らしさを武器に「人類総下僕化計画」を粛々と進める猫たちの謎の組織─というネット上の都市伝説です。
 秘密組織ですので、安易に名前は出せませんが、『NNNからの使者』ではその活動が垣間見えるはずです。猫たちがどのように暗躍し、人間の家に入り込み、人々をとりこにしていくかをお楽しみください。

 そういう私の家にも一匹、NNNからの使者がおります。名前はピノン。女の子です。
 昨日も私を夜中に叩き起こし、腕枕を強要しました。なぜ私がそんな理不尽な目に遭わねばならないのか。それがNNNの陰謀なのです。
 彼らは、「こいつには何をしてもいい」という人間を探すのがうまい。というか、そういう人しか猫の下僕になれない、というのを知っている。しかも、たいていの人は猫を飼うとそんな感じになる、というのもわかっている。
 つまり、私たち人間は、猫に「チョロい」と思われている! くやしいことに、実際にチョロい!
 猫は犬と違ってしつけができないといいますが、基本的に猫はやりたいようにやるだけです。
 例えば、
「この鉢植えにいたずらしちゃいけないよ」
 と言ったとしても、猫は個体差が激しいので、言うことをちゃんと聞く猫、「いけない」とわかっててもいたずらしたい時はいたずらする猫、「いけない」とわかっているので飼い主の注意を引きたい時にいたずらする猫、「いけない」とわからないから何度もいたずらする猫、「いけない」とわかってもわからなくてもすぐに興味をなくす猫─といくらでもパターンはあるんですけど、この場合、飼い主がやらなければならないのはたった一つです。
「鉢植えを片づける」
 人間の都合を猫に押しつけるなんて、無理に決まっている、と悟るしかなくなるのです! さらに、「こんなとこに鉢植えを置いたあたしが悪かったよ」と反省までさせる!
 何このチョロさ。チョロい以外の言葉が浮かばない。
 というように、「猫の下僕」というものは着々と作られていくわけです。猫を飼ったことのない人たちは、かわいいから猫の言いなりになる、と思っているかもしれませんが、それとはちょっと違う。いや、それもありますけど、っていうか、かわいい以上のものがあるんですよ、うまく説明できないけど!
 その説明できなさ加減がまた、NNNの陰謀とも言える(?)。
 となんでもNNNのせいにすればいいと思っている。言っておきますが、NNNはフィクションですからね。本当にあるわけじゃないですよ!
 けど、猫を飼い始めると「あるかも……」とつい思ってしまうのですよねえ。

角川春樹事務所 ランティエ
2017年12月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

角川春樹事務所

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