『SHOE DOG(シュードッグ)』
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あの「ナイキ」創業物語 本年ベスト1はこれだ
[レビュアー] 田中大輔(某社書店営業)
翻訳書の中には発売する前から、売れるのがわかっている本というものがある。例えば『スティーブ・ジョブズ』(ウォルター・アイザックソン著・講談社)がそうだ。
全米で大ヒットした本だからといって、日本で売れるとは限らない。しかし誰もが知っている企業の内幕を書いた本ならば、誰もが読んでみたいと思うはずだ。
ましてそれが創業時のことを書いたものならば、間違いなく買いである。スターバックスのハワード・シュルツや、アマゾンのジェフ・ベゾスなど、創業時のことを書いた本には名著と呼べるものが多い。『SHOE DOG(シュードッグ)』もそういった類の本である。昨年、この本の原著を書店で見つけたとき、これが翻訳されたら間違いなく売れると思った。同時にはやく読みたい!という思いに駆られていた。ついにその本が発売された。先行販売していた紀伊國屋書店梅田本店では、既に200冊以上売れているそうだ。
表紙を見れば、この本がナイキに関する本であるということは一目瞭然だろう。ナイキのロゴは誰もが認識していると思うが、ナイキの創業者の名前を知っているという人は少ないのではないだろうか? 普段からナイキのスニーカーを愛用している私もこの本を読むまでは、創業者の名がフィル・ナイトということを知らなかった。
ナイキの前身であるブルーリボンを創業するきっかけとなった1962年から、株式を上場した1980年までのことが、この本では時系列順に書き綴られている。おもしろいのはナイキの創業には日本が密接に関わっているということだ。日本の存在なくしてナイキは存在しなかったと言えるだろう。ブルーリボンはオニツカタイガーをアメリカで販売する事業からスタートし、ナイキ誕生にもオニツカが関係している。
さらにナイキが苦境に陥った際、それを救ったのは日商岩井であった。日商が銀行に対してブルーリボンの借金を全額返済すると宣言するシーンでは、胸が熱くなること間違いなしだ。ナイキの創業物語は期待の上を行くおもしろさだった。2017年のベストビジネス書は間違いなくこれで決まりだ!