『文学とアダプテーション』 小川公代、村田真一、吉村和明編

レビュー

6
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文学とアダプテーション

『文学とアダプテーション』

著者
小川公代 [編]/村田真一 [編]/吉村和明 [編]
出版社
春風社
ISBN
9784861105593
発売日
2017/10/16
価格
3,456円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『文学とアダプテーション』 小川公代、村田真一、吉村和明編

[レビュアー] 尾崎真理子(読売新聞本社編集委員)

時代超える翻案の役割

 『オリバー・ツイスト』『レ・ミゼラブル』のように、どんなに年月を経て表現のスタイルが変わろうと、人々の感動を呼ぶ古典がある。

 しかし、原作に忠実に再現されるだけでは色あせてしまう。時代に応じた創造的な再解釈と変更、すなわち「アダプテーション」=「翻案」がいかに重要か。本書はヨーロッパを代表する文学作品を原作として、映画、ミュージカル、漫画化されてきた近現代の作品を見渡しながら、翻案が果たす役割と可能性を研究者らが多面的に論じている。

 たとえば、『ブリジット・ジョーンズの日記』はJ・オースティン作『高慢と偏見』の翻案だが、相手の男性の名と世間並みの結婚に反発する独身女性という共通項だけ踏襲した手法が功を奏し、小説も映画も世界的に大ヒットした。

 原作が持つ普遍的な魅力を損なうことなしに、男女の社会的役割、民族や文化の変化を、制作者がどう現代にアダプト(適合)させ得るか。それが翻案の鍵になる。同時に宗教、政治に関わる差異の変更にはかなりの困難を伴うことも、小川公代氏が指摘している。

 時空が隔たるほど、独創的な姿で再生する例も見つかる。400年前の戯曲『テンペスト』から、ロックスターも登場する日本映画『佐渡テンペスト』(2013年)は発想されたという。脚本・監督を担当したJ・ウィリアムズ氏の論考を通じて、原作者シェイクスピアと佐渡に流された世阿弥の能をつなぐ糸、ならぬ意図がたしかに浮かび上がる。

 このほかにも仏語圏の映画についてはブレッソン監督作を中心に野崎歓氏が、独語圏ではクライスト作『ミヒャエル・コールハース』を眞鍋正紀氏が、イタリア映画における小説とオペラは堤康徳氏が、それぞれ密度濃く、筆を振るっている。

 「オリジナル」とは何か。感動の源泉がどこにあるのか。映像、舞台芸術を深掘りしたい愛好者には、参考になる点が多いだろう。

 ◇おがわ・きみよ=上智大准教授◇むらた・しんいち=同教授◇よしむら・かずあき=同教授。

 春風社 3200円

読売新聞
2017年11月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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