『東の果て、夜へ』 ビル・ビバリー著

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東の果て、夜へ

『東の果て、夜へ』

著者
ビル・ビバリー [著]/熊谷 千寿 [著]
出版社
早川書房
ジャンル
文学/外国文学小説
ISBN
9784151829017
発売日
2017/09/07
価格
994円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『東の果て、夜へ』 ビル・ビバリー著

[レビュアー] 服部文祥(登山家・作家)

 ロス市街の外れにある庭付きの一軒家。黒人マフィアの運営する麻薬の密売所が警察のガサ入れにあう。見張り役の少年たちは、小さな不運が重なり、うまく知らせることができなかった。

 客一人と無関係な少女が犠牲になり、警察に「家」を押さえられて、見張り役のリーダーは窮地に陥る。組織のボスから言い渡されたラストチャンスは殺人だった。標的は3千キロ離れたウィスコンシンにいる黒人判事。飛行機は足がつくので使えない。少年は仲間と車で東へ向かう。

 ロスから一歩も出ることなく、社会の底辺で生きてきた少年たちは、地図の見方さえよくわからない。はじめて目にする、北米大陸の自然と、ロス以外の街。そして白人中心の社会。原書のタイトルは、素性を隠すために少年が着るドジャースのユニフォームから取った。黒人選手をはじめて起用した球団でもある。

 クライムノベルとしてはじまり、ロードノベルになった物語は、また犯罪小説に戻って一気に加速し、二転三転しながら主人公を成長させる。重層的な物語はずしりと心地よく重い。熊谷千寿訳。

 ハヤカワ文庫、920円

読売新聞
2017年11月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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