『アンチクリストの誕生』 レオ・ペルッツ著

レビュー

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アンチクリストの誕生

『アンチクリストの誕生』

著者
レオ・ペルッツ [著]/垂野 創一郎 [訳]
出版社
筑摩書房
ジャンル
文学/外国文学小説
ISBN
9784480434661
発売日
2017/10/05
価格
972円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『アンチクリストの誕生』 レオ・ペルッツ著

[レビュアー] 土方正志(出版社「荒蝦夷」代表)

 この十余年、翻訳が相次いで、幻想文学好きに静かな熱狂を巻き起こしている話題の作家レオ・ペルッツ、文庫初お目見えである。一八八二年、チェコに生まれ、オーストリアで活躍、ナチス・ドイツの手を逃れてパレスチナへ、そんなユダヤ系作家だが、作品はといえば豪華絢爛(けんらん)にして薄明と薄暮の気配漂う歴史幻想伝奇小説や迷宮的探偵小説、どれもがペルッツならではのタッチに目が眩(くら)む。

 一九三〇年刊の本書は、ロシア革命内乱下の暗号解読専門家の、捕虜収容所で同じ日の新聞を読み続ける兵士の、反キリストの息子を持った父親の、月を恐怖する貴族の運命が語られ、小銃で自ら命を絶った曹長の弾丸はとなりの室(へや)へそのまたとなりの室へと飛び進み、降霊会や決闘は思いもよらぬ結末へ、そんな八編が収められている。

 奇想天外不羈(ふき)奔放、苦くて甘いユーモアの果てに人間の運命の不思議と悲哀が横たわる。まずはその世界を本書でお試しいただいて、ハマったあなたは既訳を次々と読み進めたくなるはずだ。新たにペルッツ世界に出会うあなたがうらやましい。垂野創一郎訳。

 ちくま文庫、900円

読売新聞
2017年11月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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