<東北の本棚>受け継がれた開拓精神

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新渡戸三代

『新渡戸三代』

出版社
文芸社
ISBN
9784286182193
発売日
2017/07/01
価格
648円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

<東北の本棚>受け継がれた開拓精神

[レビュアー] 河北新報

 十和田市を中心に東西40キロ、南北30キロに及ぶ広大な洪積台地・三本木原。南部藩時代の末までは、不毛の原野だった。幾多の困難を乗り越えて、同地の開拓を進めたのが、南部藩士の新渡戸伝(つとう)、十次郎の親子だった。十次郎の三男が、国際連盟事務次長として活躍、世界的ベストセラー「武士道」の著者としても知られる新渡戸稲造だ。
 本書は開拓を実現させるまでの伝、十次郎の不屈の闘いや、武士道精神を自らの生き方で示した稲造の原点はどこにあったのかなどを、丁寧な人物描写によって明らかにしていく。心に迫る、歴史ドラマだ。
 伝は兵法師範だった父親が藩政に異を唱えて川内(現むつ市)に流罪になったため一度は武士を捨て、商人になる。材木商として財を成し、全国を歩くうちに、三本木原開拓の必要性を痛感した。父が許された後に藩士に返り咲き、開拓を任せられる。
 開拓は迷信や保守的な考え方に阻まれ、難航するが、山に二つのトンネルを掘り、人工河川を造って奥入瀬川から稲生川まで水を引くことに成功。馬市を開くなど、着実に進んだ。十次郎も伝の構想をさらに広げる。功績が認められ、出世を重ねるが、藩内のねたみを買って失脚し、憤死する。
 稲造は開拓者の仕事が一族の伝統と考え、工学を学ぶため札幌農学校に進む。米国やドイツに留学、東京帝大教授、一高校長を務めた後、草創期の国際連盟の発展に貢献した。評価の一方、ねたみや無意味な批判にさらされた。本書は、三代の偉業の真価は、どんな困難にも正面から挑み、人々の心の開拓に努めたことにあったと説く。
 著者は1957年生まれ。地方創生アドバイザー、元十和田市副市長(公募)。
 文芸社03(5369)2299=648円。

河北新報
2017年11月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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