【聞きたい。】池井優さん『あの頃日本人は輝いていた 時代を変えた24人』

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あの頃日本人は輝いていた

『あの頃日本人は輝いていた』

著者
池井優 [著]
出版社
芙蓉書房出版
ISBN
9784829507230
発売日
2017/11/07
価格
1,870円(税込)

書籍情報:openBD

【聞きたい。】池井優さん『あの頃日本人は輝いていた 時代を変えた24人』


池井優さん

 ■切歯扼腕…再び輝くために

 「戦争でうちひしがれ、戦後あれほど立派になった日本が、今またこれだけ低迷しているのが歯がゆくて仕方ない。元気が足りないし、ビジョンもない。何とか活を入れたい」

 そんな切歯扼腕(せっしやくわん)の思いも込めて出版した本書。さまざまな分野で「戦前戦後の日本を元気にした立志伝中の人たち」の生い立ち、挫折、成功と、その後をまとめた。松下幸之助、川端康成、長谷川町子、正力松太郎、吉田茂、古賀政男、黒澤明、白井義男、石原裕次郎、司馬遼太郎、王貞治、長嶋茂雄、渥美清…。

 改めて肩書を記す必要もない人たちだが、「その人らしいエピソードを」と自伝や新聞・雑誌の記事、関係者の著書まで調べあげ、ゆかりの地も自ら取材。長嶋茂雄現役引退試合の情景で〈黙って涙する中年男性…目をつぶり、手を合わせる老婦人の姿さえ見られた〉のくだりは球場関係者から仕入れた。

 「輝いた時代があり、その担い手たちはこんな人だったと伝えたい。書いているときは、その世界に入り込んで、もう楽しくて楽しくて…」と筆も乗った。

 先人の多くに共通するのが「人を育てる思い」「成功を導く出会い」「世界に対する意識」。また、「時代をすくいとり、生き方を模索、確立した人」と評し、「何かひとつでもくみ取ってもらえたら」と願う。

 翻って今、見渡せば-。

 「平均化され、突出しようとするとたたかれる。情報も個人がスマートフォンで得る時代。輝こうとする人も少なくなった。海外留学の募集に応募は少なく、研究テーマも魅力ない。豊かになり、無理して苦労することはないとか…」

 「国がエリートの養成を模索すべきだ」と提言もするが、こんな考えもある。

 かつて映画館で「青い山脈」の主題歌を観客みんなが歌い、「一体感がありましたね」と振り返る。あの頃日本人を輝かせていた、そんな一体感を、もう一度取り戻すことも必要かもしれない、と。(芙蓉書房出版・1700円+税)

 三保谷浩輝

   ◇

【プロフィル】池井優

 いけい・まさる 昭和10年、東京都生まれ。慶応義塾大法学部卒。同大名誉教授。専門は日本外交史だが、日米の野球にも詳しい。

産経新聞
2017年11月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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