今こそ読むべき、近代文学を問う闘争

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今こそ読むべき、近代文学を問う闘争

[レビュアー] 図書新聞

 わが国の近代文芸史上、最も注目されてきた論争だが、余程の文学マニアか研究者でない限りどんな形でどんな状況下で行われてきたのかはわかりにくかった。芥川は芥川の、谷崎は谷崎の論考をそれぞれ全集で拾い読みをするだけで、その前後を捉えることは出来にくかったからだ。このたび千葉俊二氏が時系列を辿って一冊にまとめたおかげでその凡そは掴むことが出来た。一年間に及んだ谷崎の批評に、自分に触れた部分を芥川が反論したもので、その途中で芥川が自殺したことでも話題となったが、芥川の体を張った反論が、以後の谷崎の文学の方向を決定づけ、さらにわが国の小説の方向に大きな影響を与え続けた論争である。(千葉俊二編、9・8刊、三一八頁・本体一六〇〇円・講談社文芸文庫)

図書新聞
2017年11月4日号(3325号) 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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