『独立自尊を生きて』 福澤武著

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独立自尊を生きて

『独立自尊を生きて』

著者
福澤 武 [著]
出版社
慶應義塾大学出版会
ISBN
9784766424775
価格
1,944円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『独立自尊を生きて』 福澤武著

[レビュアー] 橋本五郎(読売新聞社特別編集委員)

 福澤諭吉のひ孫(次男捨次郎の孫)で三菱地所の元社長とあれば、「選ばれし人」と思うのが普通である。しかし結核で11歳から23歳まで闘病生活を送り、大学入学資格検定で慶応大学に合格、六浪相当?で幸運にも三菱地所に入ることができた。

 結核療養所での先輩患者の一言が生きる指針になった。「親に迷惑をかけているなんて気に病むな。まずは病気を治すことだけ考えろ。エゴイストになれ」。「自分は自分、人は人」と割り切った。

 苦難がこの人をつくった。社長として旧弊や周囲の雑音にとらわれずに、若い社員の意見を積極的に採り入れ、丸ビルを始めとする「丸の内の再構築」が可能になった。経営本より哲学書を重視する著者自身が哲学的である。

 仏教の「衆生の善根を開発(かいほつ)する」とは、生きとし生けるものが本来備えている特性を開花、発揮させること。まちづくりで良い建物を造り、道路を整備する開発も同じ。そこで活動する人たちが本来備え持っている能力を遺憾なく発揮し、生きがいを感じてもらうことだという。味わい深い言葉である。

 慶応義塾大学出版会 1800円

読売新聞
2017年11月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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