<東北の本棚>愛される甘味 31文字に

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<東北の本棚>愛される甘味 31文字に

[レビュアー] 河北新報

 北海道の「白い恋人」から沖縄県の「鬼餅」まで、全国各地で愛される76の郷土菓子を詠んだ短歌99首を集め、歌人の著者が一つ一つ読み解いたエッセー。菓子の歴史や著者の思い出などにも触れ、31文字から郷土菓子の世界が広がる。
 東北地方の菓子は10種取り上げた。宮城県の「九重(ここのえ)」は、直径数ミリほどの小さな粒で、熱湯を注いで飲む。「宮城物産展にたまたまわれは来て柚子(ゆず)の九重ひとふくろ買ふ」(小池光)、「九重がお湯に浮かんでくるさまの産卵のごときを見守る夕べ」(佐藤りえ)の2首を紹介した。
 一度味わったことがある著者は「ささやかな甘みとほのかな香りに東北のつつましさを感じる」と述べる。一袋しか買わなかったという小池の作品に「銘菓が次々と生まれる中、生き残るのは難しいのではないかと危ぶむ」と言及した。
 完熟梅をつぶして加工し薄く伸ばした、山形県の「のし梅」。自身の「咲き初めし早春の日を遠くきて竹皮にうるむ<のし梅>の黄(きい)」を挙げた。「花は見れば終わりだが、実は残り有用性は限りない」という思いを込めたという。
 著者は1951年山形県生まれ。「塔短歌会」会員。本著は「お菓子のうた 甘味の文化誌」(2012年)の続編。
 ブイツーソリューション052(799)7391=1080円。

河北新報
2017年11月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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