竹内結子の映像化でもおなじみ 「姫川玲子」シリーズ最新作

レビュー

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ノーマンズランド

『ノーマンズランド』

著者
誉田哲也 [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784334911928
発売日
2017/11/15
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

強力な新キャラも登場 姫川玲子シリーズ最新作

[レビュアー] 香山二三郎(コラムニスト)

 長篇『ストロベリーナイト』で警視庁捜査一課の姫川玲子警部補がデビューしたのは二〇〇六年。すでに一〇年選手のベテランキャラといいたいところだが、物語の中では六年しかたっていない。しかしその足跡は決して平坦ではなかった。

 長篇第三作『インビジブルレイン』では自ら率いてきた姫川班が解体され所轄に飛ばされることとなり、第五作『硝子の太陽R ルージュ』ではようやく警視庁に復帰したものの、大切な同僚を失う羽目に。

 長篇第六作に当たる本書も、バレーボールを通じて恋仲になった高校生カップルが彼女の突然の失踪で破局する序幕の後、前作から八ヶ月、未だ傷心が癒えていない玲子の姿が描かれていく。だが事件は待ってはくれない。葛飾署管内で女子学生が殺され、その特捜本部に玲子たち殺人班十一係の面々も加わることに。

 玲子の捜査の相棒はかつての部下・湯田巡査長。彼女は上司・今泉管理官の温情を感じるが、捜査のほうは早々と大村敏彦という容疑者が割れる。しかも程なく本人がすでに逮捕され、本所署に留置されているという連絡が。大村にはサクマケンジという男の殺害容疑がかけられていたが、詳細は不明。玲子は知り合いの本所署員から佐久間健司殺害事件の担当検事を教えてもらい、東京地検の武見諒太と会うのだが……。

 いっぽうその頃、玲子の宿敵(!?)ガンテツこと勝俣健作警部補は警察出身の民自党の領袖・鴨志田勝に呼び出され、忌まわしい映像に関わる厄介事を押し付けられていた。

 といっても、今回は猟奇犯罪色は希薄。各章の出だしで、彼女を失った男子のその後の姿が描かれていくのは、もはやお馴染みの語り口だろう。それが玲子たちの捜査劇とどう関係するのかは後半まで伏せられるが、それがわかったとき、衝撃が走ること請け合いだ。

 今回の目玉は女子学生殺し、と思いきや、話の重点は大村のもうひとつの殺人容疑のほうへ次第に移っていく。それに絡めて、勝俣と政界の黒幕・鴨志田との絆を始めとする彼の黒い過去が明かされていくくだりにご注目。その勝俣が玲子を死神と怖れて忌避する辺りはちょっと笑えるが、今回もまた彼女を待ち受けているのは、何ともやるせない家族の悲劇であった。いったい彼女の受難はどこまで続くのか。

 勝俣の悪徳刑事仲間「ニョロ」(渾名です)やナンパ検事の武見といった新たなキャラの登場も含め、ますます次作が待ち遠しい。

新潮社 週刊新潮
2017年11月30日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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