ユニクロ潜入、現場で目にした厳しい労働の実態

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ユニクロ潜入一年

『ユニクロ潜入一年』

著者
横田 増生 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784163907246
発売日
2017/10/27
価格
1,620円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

現場で目にした厳しい労働の実態

[レビュアー] 碓井広義(上智大学文学部新聞学科教授)

 これまでに、横田増生が潜入取材の手法で書いたノンフィクションとしては、『潜入ルポ アマゾン・ドット・コム』(朝日文庫)や『仁義なき宅配 ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン』(小学館)などがある。

 そしてユニクロを扱った著書が『ユニクロ帝国の光と影』(文春文庫)だ。この本はユニクロ側が名誉毀損で訴えたため、最高裁まで争った(上告は棄却)。しかし横田は調査を続ける。その後、潜入取材を敢行した成果が『ユニクロ潜入一年』だ。

 潜入前、すでにユニクロ側に名前が知られていたことから、横田は大胆な行動に出る。一旦妻と離婚した上で再婚し、名字を変えてアルバイトに応募したのだ。そうやって入り込んだ現場で目にしたのは、「働き方改革」などどこ吹く風という、厳しい労働の実態だった。

 たとえば、ユニクロが導入した「地域正社員制度」。ブラック企業批判のやり玉にあがったのが店長のサービス残業であり、その集中的な業務負担を分散する策として出来たのがこの制度だ。ところが実際には、アルバイトから地域正社員への道は険しい。バイトやパートの人間は閑散期にはあまりシフトに入れられず、当日になってLINEで出勤を強く要請されるのだ。まるで日雇い労働者のようであり、しかも時給は安い。

 ユニクロの労働供給源は主婦と大学生だ。ある女子学生がバイトを辞めたいと申し出た時、「いったんユニクロに入ったら、卒業するまで働くことになっている。途中で辞めるのは契約違反だ」と店長が圧力をかけてきたという。肝心の契約書には、元々契約終了の日付が記載されていなかったのにだ。

 もっとも、本書が捉えたような労働実態は、じつは多かれ少なかれ、日本中のあちこちにある。そこに通底するのは、「働く人を大切にしない」というシンプルな事実。本書の内容を反面教師に、本物の「働き方改革」をあらためて考えたい。

新潮社 週刊新潮
2017年11月30日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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