『老人の取扱説明書』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
老人自身も読むべし これぞ頼れる説明書
[レビュアー] 林操(コラムニスト)
料理に醤油をかけすぎる、「私なんか邪魔でしょ」が口癖、同じ昔話を繰り返す、信号が赤に変わっても道を渡る、その他いろいろ。
そういう老人に困ってる世の多くの非老人に、まず強力にアピールする新書です。非老人から見た老人の不可解さを医学的に解明したうえで、具体的な対処法を指南してくれる、その名のとおりの『老人の取扱説明書』なんだもの。
と、ココまで聞いてムカッときたアナタはたぶん老人だとして、まぁ落ち着いてください。実はこの本、老人にこそ役に立つ。自分が当たり前、あるいは無意識にやってるアレコレのうち何が迷惑がられているのか、なぜ迷惑なのか、そして、どうすればいいのか、どうしてもらえばいいのかまでが判るからね。
非老人にとっての取リ扱イ説明書が、老人にとっては取リ扱ワレ説明書、取リ扱ワセ説明書になる。タイトルの「取扱」に送り仮名がないのは伊達じゃない。
もうひとつ、この新書でいいのは書き手が医者であること。マニュアルありきの職種ゆえか、医療人は取説を作らせると上手い。知り合いの新聞記者にも、田舎の支局に異動して方言の壁にブチ当たったとき、同じ悩みを持つ転勤族の勤務医がまとめた方言解説に救われたというのがいる。
著者の平松類は眼科医として高齢の患者10万人以上を診察してきた経験の持ち主。取リ扱ウ非老人に取リ扱ワセル老人、どちらも頼れる説明書を書くのにうってつけだわ。