『トラクターの世界史』 藤原辰史著

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トラクターの世界史

『トラクターの世界史』

著者
藤原辰史 [著]
出版社
中央公論新社
ISBN
9784121024510
価格
929円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『トラクターの世界史』 藤原辰史著

[レビュアー] 稲泉連(ノンフィクションライター)

 土を掘り起こし、力強く耕地を駆ける鋼鉄の農機――。「二〇世紀」という言葉を聞いて、この「トラクター」を真っ先に思い浮かべる人がどれほどいるだろうか。

 だが、著者は言う。〈トラクターがいない二〇世紀の歴史は、画竜点睛(がりょうてんせい)を欠くと言わざるをえない〉と。

 本書は農業史を専攻する研究者が、かつて「鉄の馬」とも呼ばれた農機の近現代史を描いた労作だ。

 アメリカでは近代文明の象徴となり、社会主義国では農業の集団化の夢を体現。また、ジョン・スタインベックの『怒りの葡萄(ぶどう)』などで憎しみの対象として描写されたかと思えば、戦車製造の技術にも転用された。

 現在の「農業のスマート化」に至るトラクターの技術的な進歩はもちろん、国家や政治、社会、文化に与えた影響を、その功罪も含めて縦横無尽に描いていく裾野の広さに圧倒される。

 なるほど、冒頭の言葉通り、まさしく時代の動くところにトラクターあり。現代史のあり様を少し違った角度から見つめる上でも、意義の深い研究成果だと感じた。(中公新書、860円)

読売新聞
2017年11月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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