『2ひきのねこ』宇野亞喜良作
[レビュアー] 服部素子
日本を代表するイラストレーターで、幻想的な少女絵で知られる宇野亞喜良(あきら)さんが、愛猫の実話を元にした描き下ろし絵本。
主人公は、赤ちゃんのときに、ももちゃんの家にやってきたオス猫の「ボンボン」。ボンボンとももちゃんはいつも一緒。お昼寝をし、大好きな木の上に登り、おやつの3時にも…。
でも、ある日、「さばくの すないろの おにぎりみたいな ちっちゃい すなこ」がやってくる。ももちゃんはすっかり、すなこに夢中。寂しくて、やるせなくて、泣きたい気分のボンボン。「ぼく、ここにいるのに…」
そんなボンボンの心の動きを宇野さんは、上目づかいや、まっすぐ見つめる目、大きく見開いた目などで描写していく。ボンボンはもう一度、ももちゃんに見つめてもらうことができるのか?
切なさを共有しながら本書を読み終えたとき、子供たちは、妹や弟ができたときのことを思い出し、ちょっぴり大人の気分になっているかもしれない。(ブロンズ新社・1400円+税)
服部素子