『虚妄の「戦後」』
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【聞きたい。】富岡幸一郎さん 虚妄の「戦後」
■精神の腐敗こそ戦後レジーム
思想家の西部邁さんが顧問を務める隔月刊のオピニオン誌「表現者」に連載したエッセーをまとめた。時期は平成17年から28年まで。
「文芸批評家の浜崎洋介さんと公開対談したとき、『クロニクルとして読めますね』と指摘され、なるほどと思いました。その視点で読み直してみると、この12年、日本は真の独立国家に向けて歩を進めることなく、逆にますます戦後レジームにしがみつくようになったと思います」
2年前に書いた「二〇二〇年までに憲法を改正する」の中で富岡さんは《憲法改正をやるのは当然の理である。(中略)自衛隊はあきらかに違憲の軍隊であり、安保法案がもし違憲というのであれば、自衛隊も解散させなければならないのが理屈である》と書く。そのうえで当たり前のことに気づきながらこれを放置しごまかしながらやってきた戦後日本人を《自分に嘘をつきつづければ魂は腐敗する。戦後レジームとは制度や体制というよりも、この日本人の精神の腐敗状態のことである》と強い言葉で批判する。
「戦後レジームからの脱却をうたった安倍政権が、戦後レジームにしがみついている。喫緊の安全保障を考えれば、そうせざるをえないことは理解できますが、それだけでいいのか」
昨年書いた「アメリカ幻想からの覚醒」においては、戦争遂行と金融グローバリズムによってしか生き延びられなくなったアメリカの姿と、それに従属することで嘘の「平和」を享受してきた半独立国家「日本」の腐敗をあぶり出す。
「浜崎さんとの対談後、客席から『日本が真に自立するためには何から始めるべきか』という質問が出ました。当然でしょうね」
富岡さんはこう答えたという。
「核武装の議論を始めることです」(論創社・3600円+税)
桑原聡
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【プロフィル】富岡幸一郎
とみおか・こういちろう 昭和32年、横浜市生まれ。中央大学文学部卒。在学中に群像新人文学賞評論部門の優秀作を受賞してデビュー。著書に『使徒的人間 カール・バルト』『川端康成 魔界の文学』など。関東学院大学教授、鎌倉文学館館長を務める。