“現代のシャーロック・ホームズ” FBIのプロファイラーが語る手法

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マインドハンター

『マインドハンター』

著者
ジョン・ダグラス [著]/マーク・オルシェイカー [著]/井坂 清 [訳]
出版社
早川書房
ジャンル
文学/外国文学、その他
ISBN
9784150505080
発売日
2017/09/07
価格
1,056円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

凶悪犯罪者の人間分析 その科学的手法とは?

[レビュアー] 西田藍(アイドル/ライター)

 犯罪者がどのような人間かを分析する「プロファイリング」という言葉は、映画『羊たちの沈黙』をはじめとした多数のフィクション作品の影響もあってすっかり浸透している。

 本書の著者ジョン・ダグラスは、1970年代にFBIの行動科学課で、プロファイリングを科学的手法に高めた立役者の一人。その活躍により後にマスコミから「現代のシャーロック・ホームズ」と呼ばれた。彼らは、どのように犯罪者パーソナリティ・プロファイリングの手法を考案していったのか。これは、実際の凶悪事件とともにそれを語った本である。

 今秋、デヴィッド・フィンチャー監督によってドラマ化されたのを機会に、邦訳文庫版が刊行された。

 営利、怨恨といったわかりやすい理由のない、快楽殺人などの暴力犯罪は、新しいタイプの現代の病理とされがちだ。しかし、著者はシリアル・キラーと呼ばれる連続殺人者は、古くから存在したのかもしれないという。

 彼らが起こす、身の毛もよだつような犯罪は、常人には理解できない。だが、日本語では殺人鬼、と呼ばれるような彼らをダグラスたちは、理解不能なモンスターとはせず、あくまでどのような人格をした人間であるかと分析していくのだ。

 著者たちは刑務所で、囚人と面接を重ね、プロファイルを進め、データを蓄積していく。彼らがどのように犯罪を重ねていったのか、どうして犯罪を重ねてしまったのか。性的な殺人動機を持つ人物の空想を、現実にしない方法はなにか、と。犯罪にわかりやすい物語を付け足す仕事ではない。

 しかし、凶悪犯罪を防ぐ方法、その答えは、まだない。著者は95年にFBIを引退したが、

「わたしが二十五年間のFBI生活を通して立ち向かった悪は、いっこうに消えるようすがない」

 と、最後の章を締めている。

新潮社 週刊新潮
2017年12月7日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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