『思想としての近代仏教』 末木文美士著

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思想としての近代仏教

『思想としての近代仏教』

著者
末木 文美士 [著]
出版社
中央公論新社
ジャンル
哲学・宗教・心理学/仏教
ISBN
9784121100306
発売日
2017/11/09
価格
2,592円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『思想としての近代仏教』 末木文美士著

[レビュアー] 安藤宏(国文学者・東京大教授)

 正統的な仏教研究にあって近代は末世もいいところ、思想史研究でもこれまで仏教は傍流扱いだった。だがここに来て、「近代仏教」に熱いまなざしが注がれ始めている。

 在来の仏教が近代にどう変貌(へんぼう)したのか、というのは確かに重要なテーマだ。意外なのは、鎌倉時代の新仏教を歴史の中心に置く今日の常識が、実は近代以降に作られたものだったという事実である。そこには西欧の宗教改革とのアナロジーが働いていた形跡があり、またキリスト教との折衷が図られるなど、さまざまな読み替えが進んでいた。形骸化したかに見える「葬式仏教」が実は近代家父長制の重要なバックボーンになっていた、という指摘も興味深い。

 本書のみどころの一つは、仏教と国家主義が合体していく過程を分析したくだりだろう。清沢満之(まんし)、田中智学、鈴木大拙が三者三様に国体との危うい均衡を渉(わた)り歩いていく様態は実にスリリング。それも含めて、筆者は「大乗仏教」至上論は日本特有の産物だったのだと結論づける。今後、仏教がこうした課題をいかに乗り越えていくべきか、との提言に深い共鳴を覚えた。

 中公選書 2400円

読売新聞
2017年12月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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