部下が自発的に動くようになる「ケンタッキー流 ほめる技術」とは?

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ケンタッキー流部下の動かし方

『ケンタッキー流部下の動かし方』

著者
森, 泰造
出版社
あさ出版
ISBN
9784866670034
価格
1,540円(税込)

書籍情報:openBD

部下が自発的に動くようになる「ケンタッキー流 ほめる技術」とは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

ケンタッキー流 部下の動かし方』(森 泰造著、あさ出版)の著者がキャリアを築き上げたのは、大学卒業後に入社したという日本KFCホールディングス。店長、スーパーバイザーなどのリーダー職を経て、以後26年以上、人財育成コーチとしてチェーン店の社員(従業員)教育を行ってきたのだといいます。

現在は、コーチングやNLP(神経言語プログラミング)、発達心理学の理論を応用し、オリジナルの人財育成理論を確立。さまざまな悩みを抱えるリーダーをサポートする活動をしているそうですが、人財育成担当だったころに注目すべき結果を残しています。2015年度に新入社員育成改革を行ったところ、新入社員の2年以内の離職者が0となったというのです。正社員の半数近くが3年以内で辞めていくという飲食業界では、考えられないような実績を打ち立てたわけです。

KFCの離職率は、かなり低いことで知られています。またパート・アルバイトでも長く勤めていただける方が多く、中には親子二代で働き続けてくれる人も多くいるほどです。

なぜ、そんなことができたのか。

それは、カーネル・サンダースの時代から今もKFCに受け継がれる、独自の企業文化にありました。

現在では、そのカーネル・サンダースの“本物へのこだわり”が仕組み化され、125の国や地域に展開する約2万店舗で実施されており、どの国や地域の店舗でも確実に離職率が低くなっています。(中略)本書では、世界中で効果を上げているKFC独自のノウハウを主軸にした、部下の育て方、動かし方をお話ししています。

(「はじめに」より)

そんな本書のなかから、「ほめ方」について解説した第3章「部下が成長する“ほめ方”」に注目してみましょう。

KFC流 ほめる技術1 「なんのためにほめるのか」を明確にする

叱咤激励しながら部下を動かしていた時代は去り、現在は「ほめて動かすコミュニケーション」がマネジメントスタイルの主流になっています。とはいえ、むやみやたらにほめたところで部下は成長しません。それどころか、ほめてばかりいるとネガティブな反応が返ってくることもあるかもしれません。著者によればそれは、「なぜ、ほめられているのか」がきちんと伝わっていないから。

そしてその原因は、リーダー自身が「なんのためにほめるのか」、その目的を明確に自覚できていないことにあるといいます。リーダー目的は、組織をまとめ上げ、成果にまい進するチームにすること。そこで、最終的な目標・成果を常に意識し、なにに価値を置いてほめるのかを明らかにしたほうがいいというわけです。

そして目的をはっきりと自覚したら、臆することなく堂々と部下をほめるべき。そうすれば部下のやる気を引き出せるだけでなく、ほめられた行動に部下の焦点を向かうようになるといいます。(92ページより)

KFC流 ほめる技術2 ほめる前に興味を持って観察する

リーダーはほめる前に、「この人はどういう人だろう」などと興味を持って部下を観察すべきだといいます。ただし気をつけなくてはいけないのは、観察の目的が「あら探し」ではないということ。あくまで「相手を理解したい」という気持ちで、愛情を持って観察することが大切だということです。

人は安心できる環境でないと、十分に能力を発揮できません。しかし「やっていることをリーダーに見てもらえている」とわかれば、部下も安心できるわけです。だからこそ、まずは興味、愛情を持って観察することが大切だというのです。

なお、ほめるのが苦手な日本人は、ほめやすいことをほめてしまいがち。しかし、それは間違いだと著者は言います。なぜなら人は、誰が見てもわかる結果をほめられるより、陰で行ってきた努力や工夫、アイデアなど、すぐには目にはつかない細部をほめられることに喜びを感じるものだから。そのため、そうした部分もきちんとほめるようにすれば、部下は「ちゃんと見てくれている」と感じ、上司に対する信頼感はぐっと高まるというのです。(96ページより)

KFC流 ほめる技術3 部下が安心して働ける環境を整える

ほめて部下を動かすためには、労働環境が整っていることが大前提。リーダーがなにを言おうと、安心して働ける労働環境にない場合、そこに説得力は生まれないからです。そして、そのことを考えるに当たって参考になるのが、離職率が低いKFCの根底を支える「レコグニション=賞賛」の文化。

KFCのフランチャイズシステムは、1号店を開いた実業家であるピート・ハーマンが基礎を築いたもの。そして彼がなにより大切にしていた信条は、「ピープル・ビジネス」。そこには、顧客だけでなく働く人をも大切にし、幸せにするという意味が込められているのだそうです。

「レコグニション」文化が根づいている組織においては、人は「職場は自分が輝ける場所である」と考えるようになるもの。そこにいて行動するだけで「認められ、ほめられ、ときには表彰される」のだから当然の話。職場を“自分が輝ける場所”と思えれば、人はそこから離れようとしなくなり、むしろ自分の居場所を守ろうとして働きはじめるというのです。

そして、その前提となるのが、安心して働ける良好な労働環境。そのような環境が整っていれば、心を開き、いろいろなことにチャレンジしようと素直に思い、動くということ。そのため、安心して働ける環境を整備することこそ、リーダーが初めに取り組むべきことだと著者は記しています。(100ページより)

KFC流 ほめる技術4 「人格」ではなく具体的な「行動」をほめる

部下をほめる第一の目的は、あくまで組織の生産性を向上させて成果を上げること。組織全体の成果は、ひとりひとりの行動の積み上げでしか上げることができないわけです。そこで、ほめるときは行動にフォーカスし、その行動を具体的にほめるようにすべきだといいます。

最も伝わりやすいのは、部下がよい行動をした直後のタイミングでほめること。よいことをした直後にほめると、心に響きやすく効果も高まるということです。とはいえ、部下がよい行動をしたその場に居合わせなかったということもあるでしょう。そんな場合、部下のよい行動を伝え聞いたら、次に会ったときすぐにそのことをほめるとよいそうです。

そのためにも普段から、誰かがよい行動をしたら、リーダーのもとに報告があるような環境を整えておくことも必要。伝聞形式でほめることは、直接ほめられるのとはまた違い、チームの一員として認められた印象を強く与えるといいます。(104ページより)

KFC流 ほめる技術5 ほめるテーマを決め、事前に共有する

大切なのは、常に部下の行動を観察しつつ、よい行動があったらすぐにほめて伸ばすこと。そしてほめる目的は、部下を育て成果につなげること。そこで、どんなふうに成長してもらいたいか、部下をどのようにのばすべきか、事前にプランニングしたうえで、計画的に「レコグニション」を行うべきだと著者はいいます。

ただし、プランニングといっても、それほど難しいことではないのだとか。「今週はどんな分野を強化したいか」、ほめるテーマを決めておくだけ。たとえば、「今週は“スピード&サービス”を充填的に賞賛する」といった具合です。

また、テーマを決めたらチームで共有することが大切。共有すれば、部下やメンバーもそのテーマ(行動)を意識するため、より効果が上がるというわけです。そして、ミーティングの場などで、誰のどんな行動が賞賛に値していたかを共有すれば、「なるほど、そういう行動もほめられるのか」といったさらなる共有が生まれることに。テーマを共有することで、チーム全体がより強化されていくわけです。(108ページより)

KFC流 ほめる技術6 欠点も長所として注目する

ネガティブとポジティブは表裏一体。たとえば「作業が遅い」ことをポジティブにとらえれば、「作業がていねいだ」と言い換えることが可能になります。つまり、どんな特徴もすべて長所として変換すれば、ほめることができるということ。

「理屈っぽい人」は「論理的な人」であり、「口下手な人」は「聞き上手な人」でもあるということ。言葉をポジティブなものに変換し、積極的に部下の長所を見つけていくことが大切だという考え方です。(112ページより)

ネガポジ変換表

ネガティブ  ⇨ポジティブ            あきらめが悪い粘り強いあわてんぼう取りかかりが早いいばっているプライドがある怒りっぽい熱い情熱がある臆病な用心深いおせっかい世話を焼く堅苦しいきまじめな変わっている独創的な頑固意思が固い空気が読めないマイペース計画性がない臨機応変なダマされやすい人を信じられるぼーっとしている自分の世界がある無口な思慮深い

(115ページより)

KFCが人材を「人財」と表しているのは有名な話。その原点にあるのは、「自ら動く生産性の高い部下は、まさに財(たから)である」という発想です。大切なのは、その財を失うことなく輝かせること。それが組織の行動力となり、成果につながっていくということですが、その方法論はKFC以外の職場でも応用できるはず。だからこそ、本書には利用価値があるのです。

メディアジーン lifehacker
2017年12月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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