仕事の成否を決めるのは「誰に託すか」。デキる「いまどき部下」を見極める方法

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「いまどき部下」を動かす39のしかけ

『「いまどき部下」を動かす39のしかけ』

著者
池本 克之 [著]
出版社
三笠書房
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784837927099
発売日
2017/11/17
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

仕事の成否を決めるのは「誰に託すか」。デキる「いまどき部下」を見極める方法

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「いまどき部下」を動かす39のしかけ』(池本克之著、三笠書房)の著者は、7社の社外取締役を務める一方、コンサルタントとして一部上場企業からベンチャー企業まで100社以上を指導している組織学習経営コンサルタント。そんな立場上、さまざまなビジネスパーソンの悩みが届くのだそうです。なかでも特に深刻で、いちばん多いのが「部下マネジメント」に関するものなのだとか。

・ 部下が何を考えているのか理解できない

・ こちらの指示どおりに動いてくれない

・ 誰にどんな仕事を任せればいいのかわからない

(「はじめに」より)

たとえば、このような悩みを抱えている上司が多いというのです。たしかに上司の感覚からすれば、「いまどき部下」の言動は理解しにくいかもしれません。しかし、彼ら、彼女らの考えを分析してみると、「どうしてそんな発言をするのか」「なぜそういう行動に至ったのか」が見えてくるのも事実。

そこでその分析をもとに、「いまどき部下」にも安心して仕事を任せられるよう、著者がつくりあげた「しかけ」を紹介しているのが本書だということ。

きょうは第2章「仕事の成否は、『誰に託すか』で8割決まる」から、いくつかの要点を引き出してみることにしましょう。

「任せる人を間違えている」会社の成長は遅い

これまでの「任せ方」が通用しなくなってきているとはいえ、リーダーである以上は若い部下たちに仕事を任せなければなりません。ましてや、いまどきの若者たちは基本的に根が真面目で、能力が高い人も多数。そういう若者に仕事を託すためにも、任せることをあきらめてはならないのだと著者は主張します。とはいえ、「任せる人」を間違えると、仕事はうまくいかないのも事実。

そこで大切なのは、「何度指導しても覚えない若者には、その仕事を任せなければいい」という考え方。いまどきの若者は無理にがんばろうとせず、覚えるのが難しそうだと簡単に投げ出す傾向があるため、何度も教えなければならない仕事は任せず、一、二回教えればできる仕事だけをやってもらえばいい、というのです。

また、いまの若者なかには、自分中心に考え、上司やチームに迷惑をかけてはいけないという考えをあまり持っていない人も少なくないといいます。しかし、そういうタイプを「どうして相談しなかったんだ」と問い詰めても、あまり効果は望めません。したがって、周囲に被害が及ばないような簡単な仕事を任せるなどの策が必要だというのです。

そして、争いごとを好まず、穏やかな人間関係を求めるのがいまどきの若者。ディープな人間関係を求めているわけでもないので、必要以上にまわりの人と関わろうとしないわけです。だから、「人と深く関わるのを避けている相手とは、深くかかわらなければいい」というのが著者の考え方。コミュニケーションをあまりとらなくてすむ仕事を任せるなど、本人の負担を減らしたほうがチームの雰囲気はよくなるということです。

ドライな考え方だという気もしますが、「任せる人」を間違えている会社では、「なかなか生産性が上がらない」「どんなにがんばっても目標が達成できない」など、さまざまな問題が発生するのだそうです。だからこそ、誰に任せるべきかを考えなおしてみる必要があるのかもしれません。(50ページより)

こんな人には「任せない」

そうした考え方をもとに、著者は「任せてはいけない人」のタイプを紹介しています。もっともこれは若者に限らず、全世代に共通することでもあるといえそうです。

チームの成長を邪魔する人

たとえば商品が売れなかったときにも言い訳ばかりして、自分で責任を取ろうとも、自分で問題解決をしようともしない「批評家タイプ」。なんとか打開策を練ろうとしている人たちに、「そんなことをしても意味がない」「いまさら遅い」などと水を差すような発言をし、チームのやる気を奪ってしまう人です。

「全体思考」ができない人

全体思考とは、チーム全体や部署全体、さらに企業全体を俯瞰して見られる思考のこと。物事を自分中心で考えるのではなく、「いま、チームから求められている自分の役割はなにか」と、全体から個人の取り組みを考えられるということです。しかし、いわれたことをやっていればいいという「指示待ち人間」にとって、全体思考を持つことは困難だというわけです。

「人間性」に問題がある人

ここでいう「人間性」とは、性格や人柄ではなく「仕事に対する適性」。あらゆる世代に当てはまりますが、やる気がなくて仕事をサボるような人、いい訳ばかりしている人、すぐに仕事を投げ出す人、人を見下す人などがその一例だそうです。

三回以上同じ失敗を繰り返す人

失敗は誰にでもあるものですし、同じ失敗も二回繰り返す程度なら、「ついうっかり」ですますことができるでしょう。しかし、三回以上繰り返す人は、失敗を真剣にとらえておらず、なにも対策を講じていないということになるのだそうです。こういうタイプは「能力」よりも「思考」を鍛える必要があるわけですが、現実的にはなかなか困難でもあります。

責任感のない人

こういうタイプは、面倒なことを嫌うもの。プロジェクトを任されるのは全力で避け、任されても平気で頓挫させたりするというのです。頼んでもやろうとせず、上司に注意されても行動を改めようとしないため、教え育てるのが困難だといいます。

このように、いろんなタイプがいるわけですが、会社にいる人材は有限。責任感のある人だけで仕事を回せるほどの余裕はないため、なるべく任せられる人を厳選して「大きな仕事」を任せ、任せられない人には全体に影響のない「小さな仕事」を任せるのがいいという考え方です。(55ページより)

仕事を「任せるに足る人」三か条

だとすれば、「仕事を任せるに足る人」とはどんなタイプなのでしょうか? いままで多くのビジネスパーソンを見てきた著者によれば、「この人には仕事を任せられる」という人には3つの特徴があるのだそうです。

1. 任されることで成長できる人

スタンフォード大学心理学教授キャロル・ドゥエックによると、世の中には「成長型マインドセット」を持つ人と、「停滞型マインドセット」を持つ人がいるのだとか。子どもたちにチャレンジングな課題を出すという実験をした結果、子どもたちはこの2つのタイプに分かれたというのです。いうまでもなく、積極的に課題に取り組めるのが前者で、その逆が後者。

そして、この傾向は大人にもあてはまるといいます。つまり仕事を任せられるのは、「成長型マインドセット」を持っている人だということ。任せられた仕事を「どうやればいいのか」「どうすればうまく行くのか」と積極的に考えたり、勉強したり、実践したりするタイプです。

2. 任されるストレスに耐えられる人

どんな仕事でも、任された以上は「責任」が発生するもので、そこには少なからずストレスが生じもします。だからこそ、大きなプレッシャーがかかる場面で実力を発揮できるメンタルを持つ原石を見つけ出し、磨くのがリーダーの役割。

ちなみにプレッシャーに強いタイプは、普段から「おもしろい」「楽しい」「なんとかします」という前向きな言葉を使うもの。逆にプレッシャーに弱い人は、「どうしましょうか」「無理だと思います」「なぜ私が?」「どうしてもというならやりますが」などネガティブな発言が多いそうです。

3. 臨機応変に工夫できる

仕事は好きなことばかりではありません。しかし結局のところ大切なのは、目の前の仕事に楽しさを見出せるかどうか。単純で退屈に見えるルーティン作業も、工夫によっては生産性をアップできるので、そこに楽しみを見出せる可能性もあります。

いま最優先して進める作業、後回しにしてもいい作業、合間合間に進める作業、人と分担したほうがいい作業など、作業ごとに臨機応変に対応できる人こそ、「任せるに足る」人だということです。(62ページより)

多くの若者を見てきた著者は、近年は「若者の二極化」が急速に進行していると感じているのだそうです。将来の目標をしっかり持ち、きちんと計画を立てたうえで行動に移すタイプが1割。将来像を持っておらず、「大企業に入りたい」ということしか考えていない超安定志向の若者が9割。

だとすれば、今後は仕事を任せるにしても、いままでの方法では通用しないということ。そこで、本書で紹介している「部下を動かすしかけ」が重要な意味を持つわけです。部下との関係に悩んでいる人のであれば、本書を参考にしてみてはいかがでしょうか?

メディアジーン lifehacker
2017年12月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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