【写真集】『ユージン・スミス写真集』W・ユージン・スミス 被写体の心も写し出すよう

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【写真集】『ユージン・スミス写真集』W・ユージン・スミス 被写体の心も写し出すよう

[レビュアー] 渋沢和彦

 娘を治療する医師を不安そうに見つめる家族、けなげに糸を紡ぐひなびた小村の女性…。

 グラフ雑誌『ライフ』を中心に活躍したアメリカの著名な写真家、ユージン・スミス(1918~78年)の写真だ。

 「カントリー・ドクター」「スペインの村」「助産師モード」「ピッツバーグ」など数多くのフォト・エッセーを発表し、フォト・ジャーナリズムの歴史に確かな足跡を残した。写真集にはそれら代表作品が収められた。

 スミスは日本と関係が深い。太平洋戦争で従軍し、沖縄戦で重傷を負った。戦後の高度成長を支えた巨大企業を取材し、労働に励む工員たちを活写した「日立」や熊本県の水俣湾周辺の公害で苦しむ漁民らを被写体にした作品はよく知られている。

 帯には「あるがままの人生をとらえた写真家」とある。モノクロームの写真は、被写体の心をも写し出しているようだ。

 現在、東京都写真美術館で「生誕100年 ユージン・スミス写真展」が開催されている。(クレヴィス・2500円+税)

 渋沢和彦

産経新聞
2017年12月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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