【ビジネスパーソンの必読書】『百円の男 ダイソー矢野博丈』大下英治著
[レビュアー] 産経新聞社
■誕生は偶然から
生活雑貨などを一律100円(税別)で販売する「百円ショップ(百均)」は、すっかり街の風景に定着した。海外にも進出し、業界トップの「ザ・ダイソー」は26の国と地域に1800店(2017年3月現在)を展開する。
本書は、大創産業の創業者で代表取締役の矢野博丈氏の評伝。矢野氏が「百均」を始めたのは偶然だった。雑貨の移動販売をしていたときに開店が遅れ、お客さんにせかされたのがきっかけ。値段を聞かれ、伝票を確認する時間がなかったため、とっさに「100円でええ」と言い放った。他のお客さんも次々に聞いてくるので「それも100円でええ」と答えた。こうして矢野氏の売る商品はすべて100円になった。
矢野氏は長期経営計画を立てないのだという。「行き当たりばったり」でも行ける、そう自信を持てたことが矢野氏の成功要因の一つなのだろう。それは数奇な運命を乗り越えたことで培われた自信に違いない。