『天涯無限』
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『アルスラーン戦記16 天涯無限(てんがいむげん)』刊行記念インタビュー 田中芳樹
[文] らいとすたっふ
―― 本編は完結しましたが、まだまだこの世界を楽しみたいという読者も多いと思います。例えば「東方巡歴」(『王都奪還 仮面兵団』所収の外伝)の続きなどの執筆予定はありますでしょうか。
田中 予定としてはまったくありません。今後はこれまでよりもさらに暇を作ろうと思ってますので(笑)、そのあいだにその気になれば……とは思ってますが。「東方巡歴」なんかは書き始めたらどんなに長くなるかわからないので。なかなかここでお約束するわけにはいかないですしね。
―― 約束はしないほうがいいかもしれませんね(笑)。気が向けばあるかもしれないということで。あるいは悪魔が降りてくれば?
田中 気が向けば……というよりは、自分で書かなくてはと思ったときにやっぱり降りてくるようなので。悪魔のせいだけにはできないんです。
―― 自身のモチベーションが高まったときに降りてくると。
田中 うーん……順序としてはどちらが早いのかわからないですが。降りてくるのにしたがってこちらのモチベーションが高まってくるというか。
―― 『アルスラーン戦記』の世界はとても広くて歴史もあるので、この世界で新たな物語が生まれる余地はたくさんありますよね。
田中 世界各国で、再建話ができますし(笑)。
―― それが実作者の手になればもっと嬉しいというファンの思いもあるわけですが。
田中 ありがとうございます。
―― 異世界ファンタジーの認知は広がりましたが、ペルシアものはあまり増えていないような気がします。まだまだ可能性はありそうですよね。
田中 そうですね。アラビアとかあのあたりももっと出てくると面白いんですけど。いろんな人にいろんなチャレンジをしてほしいですね。
―― では最終巻『天涯無限』の刊行にあたりまして、読者の皆さまにメッセージがありましたらぜひ。
田中 えー、桃栗三年柿八年といいますが、アルスラーンは三十一年ということで。たいへん長く待っていただいて、そのあいだ見捨てないでいただいて、本当にありがとうございます(礼)。途中で見放されてもしかたがないような歳月でしたが、なんとかかんとか山を登りきって……あとは転げ落ちるだけなんですが(笑)、読者の方々のご期待にそえているかどうか……これがやっぱりドキドキものでして。反応をお待ちしております。
―― ……まあ、みんな生き残って大団円になると予想している人はまずいないと思いますので(笑)それは大丈夫でしょう。
田中 機会があれば「騎士道物語というのは最後は……」というのはちらちら言ってまいりましたのでね。予感してはいただけてるかと思うんですが、さて(笑)。
田中芳樹(たなか・よしき)
1952年熊本県生まれ。学習院大学大学院修了。’78年、「緑の草原に……」で幻影城新人賞を受賞。’88年『銀河英雄伝説』で星雲賞(長編部門)受賞。2006年『ラインの虜囚』でうつのみやこども賞受賞。「アルスラーン戦記」「薬師寺涼子の怪奇事件簿」「創竜伝」等超人気シリーズを持つ。