編集者と読者の繋がり『リバース&リバース』 奥田亜希子

レビュー

3
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リバース&リバース

『リバース&リバース』

著者
奥田 亜希子 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784103504320
発売日
2017/11/22
価格
1,620円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

編集者と読者の繋がり

[レビュアー] 瀧井朝世(ライター)

 日常のなかの人々の感情の機微を丁寧に描く作風が魅力の奥田亜希子。新作『リバース&リバース』は、人気のティーン誌の編集者と、その読者の物語が交錯していく作りだ。

 文芸書部署を希望して出版社に入った菊地禄はティーン誌『Can・Day!』編集部の二人だけの男性編集者の一人。特集ページを担当し、学生ライターの育成にも対応する彼が入社二年目だった六年前から担当しているのは、読者からのお悩み相談に答える「ハートの保健室」。友達との関係や恋の悩みに「ろく兄」のペンネームで真摯に答えている彼には、中学生の頃、親友だった女友達と仲違いして絶縁した苦い過去がある。そんなこともあってか、シリアスな相談を寄せた読者に親身になりすぎ、その子に振り回されているという問題も抱えている。

 一方、田舎町に暮らす中学生の郁美は、『Can・Day!』の熱心な読者だ。可愛らしい親友・明日花が大好きで、楽しく日常を過ごしているが、他の女子たちが自分抜きで明日花と仲良くしたがっていることにもうっすらと気づいている。夏、東京から容姿も性格も爽やかな男の子、道成が転校してきたことから、郁美の日常が少しずつ変化していく。

 仕事に誠実に対応している青年の苦悩、中学生の繊細な心の揺れが丁寧に描かれて読ませるが、この二人の物語がどのような形で関係してくるのか、それに対する興味も掻き立てられる。途中である程度察しはつくが、真相が分かった時にやはり胸に迫るものが。直接顔を合わさなくとも、雑誌で、ネットで、手紙で、誰かが誰かの支えになっている様相が見えてくるのも胸を打つ。タイトルにはネタバレを含めさまざまな意味合いがこめられていて味わい深い。

光文社 小説宝石
2018年1月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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