文理総合の学問「人類学」 意欲的な対談

レビュー

3
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

日本の人類学

『日本の人類学』

著者
山極 寿一 [著]/尾本 恵市 [著]
出版社
筑摩書房
ジャンル
自然科学/生物学
ISBN
9784480071002
発売日
2017/11/07
価格
950円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

文理総合の学問 その現在地と未来

[レビュアー] 渡邊十絲子(詩人)

 人類学は、じつは二種類ある。人間の生活様式を調べる「文化人類学」を想起する人が多数派だろう。大学に設置された人類学科の大半はこれで、文系学部に所属する。しかしもう一つ、生物学や医学の領域に重なる「自然人類学」がある。分類としては理系である。こちらの人類学科は、日本では東大と京大以外にはほとんどない。

 その二大学の人類学代表が対談をしたのが、山極寿一(京大)と尾本恵市(東大)の『日本の人類学』。日本の人類学はもともと文理総合の研究だったのに、二系統に分離してしまった。文化人類学は応用のきく教養と見なされたが、自然人類学をふくむ自然科学は教養扱いされず、実用的研究しか認められなくなっていった。この貧しい「現在地」から、学問と人間社会のよりよい未来を探る、意欲的な対談である。

 京大発の世界的研究である「霊長類学」の山極は、チンパンジーは人間を超えている感じがしないが、ゴリラはある意味で人間を超えていると語り、フィリピンのネグリト人など狩猟採集民を研究してきた尾本は、メンバーが平等で支配関係がない狩猟採集民と、権力と富の不平等が生まれる農耕民との比較から、現代文明を相対化する。

 気づかないうちに狭くなっている視野をこじあけるのが、こうした研究の意義だろう。「多様性」を研究対象とすることの大切さや、師の方針に背くやり方など、読みどころ満載。元気が出る本だ。

新潮社 週刊新潮
2017年12月21日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • このエントリーをはてなブックマークに追加