授賞式にのんが参列 世相を窺える「菊池寛賞」

レビュー

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その年の世相も窺える文化全般を対象とする賞

[レビュアー] 豊崎由美(書評家・ライター)


のん(能年玲奈)さん

 菊池寛賞は、芥川賞や直木賞を主催する日本文学振興会(母体は文藝春秋)が、文芸・映画など様々な文化分野において業績をあげた個人や団体を表彰する賞なので、文学賞を紹介する当欄では本来扱うべきではないのですが、その最新回である第六十五回で、アニメ映画「この世界の片隅に」に関わったチーム一同に授与されたとあっちゃあ、トヨザキ、黙ってはおれません。だって、主人公の声を演じたのん(能年玲奈)さんが、授賞式に参列したっていうんですから。

 はい、わたくし、熱烈なファンなんです。

 閑話休題。文学賞一本槍ゆえに、これまで関心を持たずにいた菊池寛賞は、調べてみると面白いですね。立ち上げたのは菊池寛その人ですけど、生前に自分の名前を冠した賞を作ったのは、他に鮎川哲也と大江健三郎くらい? もともとは文学賞の体をとっていて、設立意図は先輩作家の業績を讃えるためで、対象となるのは数え四十六歳以上の作家。選考委員は四十五歳未満の小説家だったのだとか。

 もっとも、このスタイルは一九三八年から四三年までしか続かず、歴代受賞者は徳田秋声(第一回)、武者小路実篤他二人(第二回)、室生犀星(第三回)、久保田万太郎他二人(第四回)、佐藤春夫他一人(第五回)、川端康成(第六回)となっております。

 現在の形になったのは戦後、一九五三年から。記念すべき第一回受賞者は、吉川英治、水木洋子、俳優座演劇研究所、読売新聞社会部、扇谷正造、岩波書店です。

 菊池寛賞が素晴らしいのは、歴代の受賞者(団体)を見るだけで、その年にどんなことが話題になっていたのかといった世相が浮かび上がってくること。夢枕獏、「この世界の片隅に」に関わったチーム一同、チューリップテレビ報道制作局、十九世紀博物学の不朽の名著の新訳『完訳ファーブル昆虫記』(全二十巻)を、三十年の月日をかけて完成させた奥本大三郎、浅田真央、岸惠子が栄誉にあずかった今回、是非、それぞれの授賞理由を日本文学振興会のサイトで確かめてみて下さい。

新潮社 週刊新潮
2017年12月21日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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