今日の勝敗は、日々の精進の結果。ビジネスパーソンにも参考になる「孫子の兵法」の考え方

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1分間孫子の兵法

『1分間孫子の兵法』

著者
齋藤 孝 [著、監修]
出版社
SBクリエイティブ
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784797394337
発売日
2017/12/21
価格
1,080円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

今日の勝敗は、日々の精進の結果。ビジネスパーソンにも参考になる「孫子の兵法」の考え方

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

ご存知のとおり『孫子』は、中国春秋時代の武将・孫武(そんぶ)の著作。孫武は春秋五覇のひとりである呉の闔閭(こうりょ)に仕えた兵法家で、孫子とは「孫先生」という意味だそうです。

そんな『孫子』は、18〜19世紀の英雄ナポレオンや、19〜20世紀のドイツ皇帝ヴィルヘルム二世などに愛読されたことで有名。ソフトバンク創業者の孫正義氏や、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツなど、現代ビジネス界の要人にも影響を与えています。

でも、なぜそこまで多くの人々が『孫子』を好んでいるのでしょうか? 『1分間孫子の兵法』(齋藤 孝監修、SBクリエイティブ)の監修者は、その理由について以下のように記しています。

それは『孫子』が、戦争を通して人間の生き方や考え方を深く洞察しており、国や企業の運営、リーダーのあり方などのあざやかなヒントになるからです。

戦争だけでなく、企業競争や経済戦争は、結局は人間が引き起こし、人間が遂行するものです。勝つためには、技術の進歩や時代の変化を超えた普遍的な人間学が必要になります。生き方に迷い、リーダーとして何をすべきかを悩んだ時、『孫子』にはその道をさし示してくれる力があるのです。(「まえがき」より)

そこで、『孫子』のなかからビジネスに応用できるエッセンスをコンパクトにまとめているのが本書だということ。きょうはそのなかから、「人生」についての考え方に焦点を当てた9「できれば静かに生きられる道を選ぶーー人生とは何か」を見てみることにしましょう。

ライバルもまた成長することを前提に考えよ

original

兵を用うるの法は、其(そ)の来らざることを恃(たの)むこと無く、吾(わ)が以(も)って待つこと有るを恃むなり。(九変篇)

「軍力を運用する原則としては、敵がやって来ないことをあてにするのではなく、わが方に敵がいつやって来てもよいだけの備えがあることを頼みとするのである」と孫子は言っているそうです。

もちろん、自分がなにかをしている間、敵やライバルがなにもしないでいてくれれば好都合でしょう。しかし現実にそのようなことはあり得ず、それどころか相手も成長し、力を蓄えていくものです。

戦いでは自分を過大評価するとうぬぼれて負け、過小評価すると恐怖にとらわれて敗北してしまいまます。だからこそ大切なのは、自分を適正評価すること。そのためには、相手を基準に自分を見ないことが重要。なぜなら相手は常に変化しているため、基準にはならないから。それより自分を基準にしてこそ、力を正しく蓄えていけるわけです。

孫子は、「戦いの最大の敵は相手の兵力ではなく、自分の態度だ」と何度も強調しているのだといいます。しかし私たちは、自分に不備があったりすると、「敵はまだ来ないさ」と思ってしまいがち。でも相手の油断や怠慢に頼るのではなく、常に相手の先を行こうと努力し続けることが大切。迎え撃つ万全の体制が整っていれば、敵の出方を気にする必要はなくなるということです。(174ページより)

起こりそうな変化よりも、思いがけない変化に備える

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計、利として以って聴かるれば、乃(すなわ)ち之(こ)れが勢を為(な)して、以って其の外を佐(たす)く。勢とは、利に因(よ)りて権を制するなり。(計篇)

孫武は自身の言葉として、「計謀をご主君の利益だと判断されてお聞き入れになりますなら、国内で準備すべき勝利の体制はそれで整いますから、次にあなたの軍隊に勢を付与して、外征後の補助手段とします。勢とは、その時々の有利な状況に従って、一挙に勝敗を決する切り札を自己の掌中に収めることです」と言っているそうです。

そして、このことについて監修者は、「戦略と戦術・戦法の定義はさまざまですが、戦略は戦いの根幹をなす計画であり、よって不変のもの、戦術・戦略は戦いの実践術であり、よって状況に応じて柔軟に変えるべきものだともいえるでしょう」と記しています。

したがって、将軍が君主に権限委譲を求めるときは、戦略(計)だけの採用では不足であり、戦術・戦法(勢)を任せられるだけでもいけないということ。

なぜなら戦略だけの採用だと、他の人がそれを現場で運用することになり、的確な応用ができない公算が大きいから。また、現場を任せられるだけでは、たとえ勝利を重ねたとしても国家的見地に立った利益に結びつけにくいからだというのです。

この考え方もまた、今日のビジネスにあてはめることができるでしょう。なぜなら戦いもビジネスも、私たちの計画能力を超えた複雑さを持っているものだから。つまり必勝を確信できるだけの計画と、変化する現実への対応、両方が必要だということ。起こりそうな変化に対応するだけでは不十分で、思いがけない変化に対しても即応できることが大切なのです。(176ページより)

今日の勝敗は日々の精進の結果である

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衆を治むること寡(か)を治むるが如くするは、分数是れなり。衆を闘わしむること寡を闘わしむる如くするは、形名(けいめい)是れなり。(勢篇)

「大兵力を統率していながら、小兵力を統率しているかのように整然とさせることができるのは、部隊編成の技術のせいである。大兵力を戦闘させながら、小兵力を戦闘させているかのように整然と統制できるのは、旌旗(せいき)や鉦(かね)・太鼓の合図といった指令の伝達方法のせいである」と孫子は主張しているそうです。

孫子が組織論を重視するのは、どんなに戦略が堅固でも、組織が乱れていればそれを実現できないものだから。また、どれだけ戦術・戦法にすぐれていたとしても、組織を自由自在に動かせなければ敵に突き崩されてしまうから。

しっかりとした組織をつくるには、日ごろからの取り組みが大切。そして、その基本が部隊編成と通信手段。その2つによって組織に血を通わせてこそ、必勝の戦い方ができるというわけです。(178ページより)

感情ではなく数値と論理によって未来を見渡す

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善なるものは、道を脩(おさ)めて法を保つ。故に能(よ)く勝敗の正(せい)と為る。(形篇)

「戦闘に優れた者は、戦闘における勝敗の道理を実践し、さらに戦闘における勝敗の原則を忠実に守る。だから、思うがままに勝敗を操る支配者となれるのである」とは孫子の言葉。

そして「その大原則とは、第一にものさしで計測する度、第二にますめで計量する量、第三には数を計算する数、第四には双方を比較する称、第五には勝利を策定する勝、である」と解説しているのだそうです。

「度」で戦場の広さや距離が判断できる。

「量」で投入すべき物量が判断できる。

「数」で動員すべき兵力が判断できる。

「称」で彼我(ひが)の戦力差が判断できる。

「勝」で勝敗が判断できる

(181ページより)

孫子は、「彼我の比較検討を行なって勝敗を正確に予測するためには、感覚や恣意、希望的観測などを交えてはダメで、数量的思考を用いるべきだ」と言っているというのです。

たしかに度や量がわかれば数がわかり、数がわかれば称が可能になります。その結果、勝が導き出され、必勝の形をつくり上げることができるわけです。現代の言葉でいう「シミュレーション」を数字と論理によって行ない、冷静に勝敗を分析して、「戦うかどうか」を判断するということ。そしていうまでもなく、こうした尊師の数量的思考は、今日のビジネスにおいても重要です。(180ページより)

他の章でも「強さ」「戦略」「情報戦」「実戦」「進退」「リーダー」「好機」「戦意」」と、『孫子』の教えをさまざまな角度から検証しています。監修者がいうように、ビジネスパーソンにとってのヒントも満載。短時間で読める構成になっているので、空き時間を活用して多くのことを学べそうです。

メディアジーン lifehacker
2018年1月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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