『伝説の女傑 浅草ロック座の母』 齋藤智恵子著

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浅草ロック座の母

『浅草ロック座の母』

著者
齋藤 智恵子 [著]
出版社
竹書房
ISBN
9784801912717
価格
2,376円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『伝説の女傑 浅草ロック座の母』 齋藤智恵子著

[レビュアー] 戌井昭人(作家)

 浅草ロック座は、浅草にあるストリップ劇場で、現在も六区の真ん中にデーンと構えているストリップ劇場の老舗だ。

 以前わたしは、浅草に住んでいたのだが、そのとき、ロック座の母である齋藤智恵子さんの噂(うわさ)をよく耳にしていた。

 刀で斬られたことがあるなどといった物騒なものや、勝新太郎と仲が良く、何億円も貸したとか、北野武に映画「座頭市」を撮らせたなどなど、とにかく豪快な噂ばかりで、凄(すご)い人がいるものだと思っていた。

 しかしそれは、あくまで噂であり、誇張もあると思っていた。だが本書を読んで、すべて真実らしく、噂以上だったことに驚いた。本人も週刊誌や巷(ちまた)の噂にたいし、「だいたい合っております。事実のほうがもっとすごかったり、ややこしかったりするんですけどね」とケロリと語っている。

 戦中世代の齋藤智恵子さんは、自身も踊り子だったが、はじめは踊り子の振り付けの先生だった。しかし三十五歳のとき、「先生、ストリップやりませんか?」と言われ、恥じらいを持ちつつ、考えた末、本人も踊り子になった。

 それから紆余(うよ)曲折ありつつも、どんどんのし上がり、浅草ロック座を買い取って、さらに全国各地のストリップ劇場を買収してチェーン展開をする。しかし彼女の場合、成功を目指して、成り上がったというよりも、彼女の人柄に惹(ひ)かれて、まわりに人が集まってきたようだ。現役の踊り子には、本場でレッスンを受けさせたり、引退した踊り子には、生活が困らないように、食堂を経営して働けるようにしたり、ラスベガスに家を購入したりもしている。

 齋藤智恵子さんは昨年の四月、九〇歳で亡くなった。本書には、まさしく女傑といわれるエピソードが満載だが、ここまで人を魅了したのは、彼女の大らかで、純粋なキュートさがあったからなのだと知ることができる。

 ◇さいとう・ちえこ=1926年宮城県白石市生まれ。浅草ロック座名誉会長を務め、2017年胃がんで死去。

 竹書房 2200円

読売新聞
2018年1月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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