<東北の本棚>生命の連鎖断絶に警鐘

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人類一万年の文明論

『人類一万年の文明論』

著者
安田 喜憲 [著]
出版社
東洋経済新報社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784492223796
発売日
2017/09/22
価格
2,592円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

<東北の本棚>生命の連鎖断絶に警鐘

[レビュアー] 河北新報

 21世紀は生命と環境の世紀、「命の森、水の循環系守れ」と説く。環境考古学の提唱者で国際日本文化センター名誉教授の著者による文明論の集大成だ。
 日本の近現代史で三つの「漂流危機」があったとする。第1は明治維新、第2は太平洋戦争の敗戦、第3が東日本大震災と福島原発事故。いずれも文明の転換を迫るような危機であり、「小手先の改革ではすまされない」と言う。
 第1の危機を脱するモデルは欧州文明、第2は米国文明だった。しかし第3は、学ぶべきモデルがない。日本人は今こそ、自らの手で新たな文明の時代を構築しなければならない。
 例えば大震災による津波被災地。コンクリートの巨大防潮堤が造られているが、果たして正しい行為なのか。莫大(ばくだい)な量の杭(くい)を打ち、森と里と海の水の循環系を断ち切るコンクリート防潮堤に反対する。木を植えた「森の防潮堤」造りを国民運動にしてはどうかと提案する。根底にあるのは、自然と共生した縄文文化論だ。
 いずれ地球資源は枯渇する。欧米の自然搾取型の畑作牧畜文明でなく、目指すべきは、自然を上手に利用した資源循環型の稲作漁労民のライフスタイルにある。中国・長江文明の解明から得た著者の文明論である。
 資源や水を巡り、人類がこれまで経験したことがないような「超紛争」が起きると予測、それに核兵器が使われるのは確実だ。核戦争も原発事故も、放射能汚染によって地球の生きとし生けるものの「生命の連鎖」が断ち切られる。最も恐ろしい事態を招くと警鐘を鳴らす。専門の花粉分析から始まって、オバマ前米大統領の「核なき世界の実現」から仏教の「利他の心」まで幅広い文明論を展開する。
 著者は1946年三重県生まれ。東北大大学院理学研究科修了。現ふじのくに地球環境史ミュージアム(静岡市)館長。名取市在住。
 東洋経済新報社03(5605)7021=2592円。

河北新報
2018年1月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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