【児童書】『おなじそらのしたで』ブリッタ・テッケントラップ作・絵、木坂涼訳

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おなじそらのしたで

『おなじそらのしたで』

著者
ブリッタ・テッケントラップ [著]/木坂涼 [訳]
出版社
ひさかたチャイルド
ISBN
9784865491227
発売日
2017/12/13
価格
1,650円(税込)

【児童書】『おなじそらのしたで』ブリッタ・テッケントラップ作・絵、木坂涼訳

[レビュアー] 永井優子

 笑みこぼれたはずみにふり仰いでも、心に渦巻く暗い嵐に顔を背けたときでも、ふと見上げれば誰の上にも空がある。

 この本で最初に登場するのは、都会の屋根の上で目を光らせ、身を寄せ合う猫の一家。夜空の一部が雲形に切り抜かれ、三日月の光を受けた黄金色に染まる。ページをめくると、その光は草原を照らすまぶしい空になる。草原を悠々とゆくライオンたち。そして、「ぼくたちはみんな おなじそらのしたで いきている ここでもとおくでも」と文章がつづられる。

 凍った雪の上で出会うペンギンのカップルも、花咲く野原で遊ぶウサギたち、空高く飛びながら歌う鳥の群れも-。みんな空を見上げている。表紙からすべてのページに雲や月、しずく、ハートなどの型抜き仕掛けがほどこされ、一つ空がどこまでも続いていく。

 見知らぬ世界で同じ空の下、生きている仲間たちがいる。そして、近くには寄り添える人がきっといるはず…。空を眺め、静かな力がわいてくる理由が分かる気がする。(ひさかたチャイルド・1500円+税)

 永井優子

産経新聞
2018年1月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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