『ぼくらがつくった学校』
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<東北の本棚>絶望から再生への軌跡
[レビュアー] 河北新報
東日本大震災の津波で父と祖父母を失った少年の姿を軸に、絶望から再生へと向かう心の軌跡を追ったノンフィクションだ。
岩手県大槌町の佐々木陽音(はると)君(震災当時小学3年)が通う大槌小は激しい津波に襲われ、燃え上がった。母は無事だったものの、父は4カ月後に遺体で見つかり、祖父母は行方不明に。胸が押しつぶされそうで、涙が止まらなかった。
町教育委員会は被災した小中学校を一つにして小中一貫校を建設する方針を決定。日本ユニセフ協会の支援で、子どもたち自身が新校舎のデザインを考えるプログラムが始まった。
木が生えた図書室、テラス付きの理科室…。次々とユニークなアイデアが出された。陽音君のグループは町のイベントに使えて災害にも対応できる体育館を提案。アイデアの一部は実際の設計に採用された。
日常を失って初めて学校の多様な役割に気付いた子どもたち。アイデアを生かした学校建設は復興のシンボルになった。「子どもは、未来も希望も夢も持っているので、もっと子どもを活用してほしいです」。悲嘆を乗り越えて力強く語る陽音君の言葉が胸に響く。
著者は1969年生まれ、千葉県出身のフリーの編集記者。児童書作家でもあり、「おならくらげ」でひろすけ童話賞受賞。
佼成出版社03(5385)2323=1620円。