ニュータウンの社会史 金子淳 著

レビュー

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ニュータウンの社会史

『ニュータウンの社会史』

著者
金子 淳 [著]
出版社
青弓社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784787234278
発売日
2017/11/28
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

ニュータウンの社会史 金子淳 著

[レビュアー] 森彰英(ジャーナリスト)

◆住民らは考え、動いた

 評者は多摩ニュータウンについてある程度知っているつもりだった。住民の高齢化が進み、買い物難民のためにスーパーの移動販売が実施されている状況などを捉えて高度成長期の負の遺産などと、数年前に書いた。だが本書を手にして、まず「まえがき」の「ニュータウンに対して好奇の目を向け、その問題性をあぶり出して批評する人は、外部からニュータウンを一方的に『見る』位置にいる」という言葉にガツンとやられた。

 著者は徹頭徹尾、ニュータウンを構成する地域社会に軸足を置き、計画して開発する側ではなく、地域の人々がどう考え、どう行動したのかを具体的に丹念に記述していく。だからページをめくるごとに知っているつもりが壊され、初めて知るリアルな真実が次々浮かび上がる。

 圧巻は第二章「開発と葛藤」。一九六〇年代の高度成長に伴う人口増加に対応するとともに、乱開発に歯止めをかけるという旗印のもとに展開された計画の舞台は多摩丘陵地帯の約三千ヘクタール。そこで主に農業を営んでいた地域住民が、様々な矛盾や葛藤に直面しながら新しいまちづくりを模索していく。著者は「ニュータウンには歴史がない」という常套句(じょうとうく)を批判して述べる。「開発前の歴史や開発そのものへの関心はみられず、<いま・ここ>でのニュータウン居住だけが前景化される」。これまた重みのある指摘だ。

(青弓社・1728円)

<かねこ・あつし> 1970年生まれ。桜美林大准教授。著書『博物館の政治学』など。

◆もう1冊 

 原武史著『団地の空間政治学』(NHKブックス)。高度成長期に誕生した大団地での住民自治の実態を明らかにする。

中日新聞 東京新聞
2018年1月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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