「自然回帰」を説くだけの暴論にならないよう議論の糸口に

レビュー

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もしかしてうちの子も?

『もしかしてうちの子も?』

著者
女子パウロ会 [著]/山中 千枝子 [著]/聖パウロ女子修道会 [著]
出版社
女子パウロ会
ISBN
9784789607865
価格
972円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

「自然回帰」を説くだけの暴論にならないよう議論の糸口に

[レビュアー] キリスト新聞社

 ネットリテラシーの必要性が叫ばれて久しいが、いまだに学校など教育現場における対応は十分と言えず、技術の進歩にはとうてい追いついていないと言わざるを得ない現状である。

 本書は、ネット中毒や「スマホ育児」の危険性について警鐘を鳴らしつつ、「見守り」の現場から具体的な症例を紹介している。

 中学2年生のユキを主人公とする架空の「星野家」が、家族会議を開いてルールなどをめぐり話し合うという「教科書」風の構成で、分量も少なく読みやすい。

 ここで提示されている問題は、何も「ネット」や「スマホ」に限ったことではない。中毒性が高い嗜好品はオトナ社会にいくらでもあるし、それに没頭することで心身に悪影響をもたらすのは子どもに限った話ではない。

 さらに重要視したいのは、日々刻々と移り変わるツールそのものよりも、それらをうまく使いこなしつつ、家族、友人らとの人間関係をいかに健全に保てるかという側面である。本書内で交わされる架空の会話にも、「ネット中毒」以前に問われるべき問題が散見される。筆者の意図とは異なるだろうが、父親の影が薄いのもやや気がかり。

 当然、必要性を感じるまではスマホや携帯などを「持たない」という選択肢もあり得るし、「世の中の風潮に流されず自分の信念を貫いた」という証言は尊い。同時に、科学的根拠が乏しいまま新しい文化・文明を否定して「自然回帰」を説くだけの暴論にならないよう十分注意が必要だろう。

 2000年代に『ゲーム脳の恐怖』が多くの論争を巻き起こしたことは記憶に新しい。「一緒に川に行って魚を釣ったり、山に行って木の実を探したりしよう。そのほうが楽しいことを教えよう」という台詞もあるが、アウトドアが楽しいと思うかどうかは個人差がある。

 教会でもぜひ議論を深めたいテーマ。

キリスト新聞
「Ministry(ミニストリー)」2017年11月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

キリスト新聞社

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