“ガンダム生みの親”が闘い続けた時代のうねり

レビュー

5
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原点 戦争を描く、人間を描く

『原点 戦争を描く、人間を描く』

出版社
岩波書店
ISBN
9784000611923
発売日
2017/03/10
価格
1,944円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

“ガンダム生みの親”が闘い続けた時代のうねり

[レビュアー] キリスト新聞社

 『機動戦士ガンダム』が好きな人なら、知らない人はいないであろう安彦良和。だが彼が全共闘の「首謀者」として逮捕され、大学からも除籍処分となった過去をもつことを知る者は少ない。

 かつてキリスト教界においても諸教会や各教団をも巻き込み、対立と分裂の禍根を残した全共闘世代。だが、彼らは禍根だけを残したのか。そもそも全共闘が目指した「革命」とは何であったのか。

 なぜ連合赤軍における殺人の肯定にまで至ったのか。安彦自身はベトナム反戦運動において、何をなそうとしたのか。そして、何を誤ったのか。

 彼は当時活動を共にした仲間たちにも接触を試み、聴き取りを行う。彼を含め全共闘に関わった若者たちの多くが傷ついた。そして傷ついたがゆえに、長く沈黙を守ってきた。だが、今こそ声を出すべきではないか。あの時代とは何であったのかを捉え直し、後世に残すべきではないか──。

 そこには10年かけて連載された安彦の漫画『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』に通底するものがある。彼は全共闘による挫折の後、失意のうちにアニメーターとなった。ガンダムで時代の寵児になるものの、限界を感じてアニメ界を去る。もう二度とアニメには関わるまいと漫画家になったのである。だが全共闘にせよガンダムにせよ、自分が一度深く関わったものをなかったことにはできず、もう一度かたちにする。それは彼の、歴史というものへの徹底した誠実さである。

 思想とは個人が主体的に選び取るものなのか。それとも歴史の中で、必然的にそこへとたどり着くものなのか──安彦良和の語る自分史を通して、時代のうねりと個人の闘いとの「はざま」が見えてくる。

キリスト新聞
「Ministry(ミニストリー)」2017年11月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

キリスト新聞社

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