PTA改革とオタク主婦――『七色結び』著者新刊エッセイ 神田茜

エッセイ

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七色結び

『七色結び』

著者
神田, 茜
出版社
光文社
ISBN
9784334912000
価格
1,650円(税込)

書籍情報:openBD

PTA改革とオタク主婦――『七色結び』著者新刊エッセイ 神田茜

[レビュアー] 神田茜

 今から二十数年前「小説宝石」に春風亭昇太(しゆんぷうていしょうた)兄さんの新作落語と並んで私の書いた新作講談「幸せの黄色いハタ」を掲載していただいたときには、もっともっと成人男性向けの雑誌だったと思うのです。私が若かったせいかもしれませんが、友達に大きな声で「読んでね」とは言えなかった記憶があります。

 こんなに真面目な文芸雑誌に路線変更されているとは知らずに、私はその間に結婚し二児を出産して諸々あって別居をして離婚に至り、小説を書くことでその辛さを紛らわすという地味な生活を送っておりました。

 たまたまPTA活動に熱心な地域に住んでいて、これも親の務めなのだろうと先輩たちに教えられるまま働きはじめ、数年後にはその仕事量と内容に疑問が湧きました。自分の仕事を休んでまで、心身の具合をわるくしてまで毎年続けるPTA活動が、本当に子どものためになっているのか?

 国の教育問題は山積みですが小中学校の教職員の不足も深刻なので、それを補うという意味でも保護者の協力があった方がいい。そのためには自由参加型のPTA活動が理想的で、教育委員会やPTA連合会(協議会)の天下り組織に管理されている今の形は、親たちをがんじがらめにしています。親心を利用し子どもを盾にとり、組織を維持するために作ったPTAの仕事はもうそろそろ無くしていただきたい。そして保護者側にも「頑張り過ぎない」勇気が必要なのでしょう。

 そんな怒りを真面目な小説にするはずだったのです。PTA会長の職を押し付けられた女性主人公が、現実逃避としてビジュアル系ミュージシャンに入れ込んで、どんどん深みにハマっていくという設定にしたのですが、書いているうちに私自身が深みにハマってしまい、半分くらい痛いオタクおばさんの話になってしまいました。表現が行き過ぎ、二十数年前の本誌向きになりましたことを深くお詫び申し上げます。

光文社 小説宝石
2018年2月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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