教室と大量殺人――『少女を殺す100の方法』著者新刊エッセイ 白井智之

エッセイ

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少女を殺す100の方法

『少女を殺す100の方法』

著者
白井智之 [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784334912017
発売日
2018/01/16
価格
1,870円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

教室と大量殺人

[レビュアー] 白井智之(作家)

武装した強盗が教室に乱入してきてマシンガンを乱射するという妄想は多くの公教育経験者に心当たりがあると思う。ゾンビ化した先生が襲ってくるとか日本兵の残党が竹槍で突いてくるというのもある。生徒のアタマがスキャナーズみたいに次々爆発するというのもある。中年オヤジが「ちょっと殺し合いをしてもらいます」などと言うこともある。子どもは想像力が豊かだから、クラスメイトの首が獄門台みたいに一方を向いて並んでいるのを見ると、ちょん切ったり吹っ飛ばしたりせずにいられないのであろう。

 ぼくはこの手の妄想がべらぼうに好きで、英語(念仏)の授業中などは二つ隣のクラスの生徒まで皆殺しにしたこともある。弱いものイジメばかりしている江成くんが首をちょん切られてピクピクしているのが良い気味だった。「サッカーをやらないやつは友だちができない」というのが口癖の体育教師が、両足を千切られて屋上から吊るされ、泣きながらユラユラしていたのも愉快な思い出である。まだ大量殺人妄想に淫したことのない純情な諸兄は、満員電車や企画会議、つまらない新年会などでやってみると憂さ晴らしになるだろう。

 ぼくの大量殺人好き(誤解を受けそうだがほかに言いようがない)は妄想に限った話ではなく、クリスティの『そして誰もいなくなった』やルブランの『三十棺桶島』など、少年時代に熱中した小説もおおむね死体が多かった。映画でも「血糊20トン!」とか謳われると心が躍る。

 自分でもこの手の話を書いてみたいと思って作ったのが本書だ。ぼくは女の子と謎解きが出てくる物語が好きなので、若い女の子が二十人殺される謎を解く話を五つ書いて短編集にしてもらった。タイトルは『少女を殺す100の方法』。実用書みたいだ。

 これを読めば、小憎らしい同級生、同僚、取引先、隣人などの頭を吹っ飛ばしたくなること請け合いである。

光文社 小説宝石
2018年2月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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