呑むべきか呑まざるべきか 年末年始の反省とともに…

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呑むべきか呑まざるべきか 年末年始の反省とともに…

[レビュアー] 成毛眞(書評サイト〈HONZ〉代表)

 昨年末、編集部から新年早々に取り上げる本を選べといわれ、おもわず本書を推薦した。最後まで読み通す責務を自分に課したかったのだ。

 酒好きにとって酒量がもっとも増えるのは年末年始であろう。そして中高年の酒好きにとって、自分の身体が心配になるのも年末年始だ。このまま酒を飲み続けると、本当に寿命が縮まるのではないかと不安になる。

 しかし、盃を持つ手は止まらない。クリスマスや正月をはさんで、忘年会から新年会まで、ビールにはじまり、ワイン、日本酒、ウイスキー、焼酎、なんでも来いだ。

 ともかく誰かにきつく諌めてほしいのだが、酒と健康についての本などは敬遠してしまう。どうせ休肝日を設け、適量を守れ、などと書いているだけだろう。守れるわけがない。

 本書はまさに同じ悩みを抱えているアラフィフの酒好きが25人の医師や専門家に取材した酒の飲み方についての本である。

 とはいえ左党はグラスを持ちながら本を読むのだから、きちんと頭に入らない。そんなこともとっくにご承知とばかり、本書では随所にゴチックで強調された文章が登場する。酔いどれであっても、ここだけは読んでおきなさいというわけだ。

 たとえば、アルコールは脳全体を萎縮させる。休肝日よりもアルコールの総量を減らせ。膵炎のリスクはエタノールの蓄積で上がる。ほら、やっぱり節酒しなければ命が縮んでしまうではないか。しかも、酒飲みが頼りにしているウコンも肝障害を引き起こす可能性があるという。やっぱり酒がまずくなる。

 ところが、本格焼酎のパワーで血栓を撃退。認知症にいいのは赤ワインとビール。カベルネが健康に良い。さらに日本酒は酔える化粧水、などと良きことも書いている。

 まさにハムレットのごとく、呑むべきか呑まざるべきかなどと呟きながら、本書を読み終わったときには、すっかり出来上がっていた。

新潮社 週刊新潮
2018年1月25日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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