『鉱物のお菓子』 さとうかよこ著

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『鉱物のお菓子』 さとうかよこ著

[レビュアー] 伊藤亜紗(美学者・東京工業大准教授)

 寒天の蛍石(ほたるいし)、マジパンの藍銅鉱(らんどうこう)、エクレアとホワイトチョコの白雲母(しろうんも)…その名の通り、鉱物標本を模したお菓子のレシピ本である。シャーレや薬瓶につめられた色とりどりの結晶は、古びた標本ラベル付き。ただしその「化学組成式(材料)」は砂糖であり卵だ。面白いのは、ジュエリーでなく鉱物だからこその、質感へのこだわりだ。アクアマリンの表面は波刃ナイフでザラザラ感を出し、方解石はあくまでしっとり仕上げる。

 著者はカフェを経営する鉱物コレクター。標本が「美味(おい)しそう」に見えるらしい。でも逆にお菓子となった標本を見ていると、なんだか背筋がぞくぞくしてくる。甘い幸福の象徴に、鉱物という死せる自然のイメージが重なり、口にしたら最後、毒牙にかかって永遠の夢を見てしまいそう。(実際、本物の鉱物にはヒ素やウランが含まれている!)近年、食べ物も「インスタ映え」が人気だが、見た目重視もここまで極めると圧倒される。(玄光社、1700円)

読売新聞
2018年1月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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