大切なのは「心のケア」。部下の話を聞く際に心がけたいこと

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短くても伝わる対話「すぐできる」技法

『短くても伝わる対話「すぐできる」技法』

著者
森下 裕道 [著]
出版社
大和書房
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784479796145
発売日
2017/11/13
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

大切なのは「心のケア」。部下の話を聞く際に心がけたいこと

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

リーダーには、部下やスタッフが本心を話せる環境を積極的に作り、「あなたのおかげでいい仕事ができる」という期待ややりがいを用意してあげる努力が絶対に必要です。

そのためのもっとも大切なキーワードはたったひとつーー

部下やスタッフのことを「わかってあげること」です。

「今どきの」部下やスタッフが抱く不信感や不平不満は、「自分のことをわかってくれない」「自分のことを大切にしてくれない」という想いなのです。

逆に、彼らがあなたに対して「自分のことをわかってくれている」「自分のことを大切にしてくれている」と思えたら、その恩に報いようと励み、自分から考え行動し、どんな職場でも売り上げなんかカンタンに上がるようになります。

こう主張するのは、『短くても伝わる対話「すぐできる」技法』(森下裕道著、大和書房)の著者。大学卒業後に入社したナムコにおいて独特な接客法を実践し、月間売上1億円の達成や不振店舗を次々に立てなおした実績の持ち主。現在は接客、営業、人材育成、人間関係のコミュニケーション問題の観点から講演活動、執筆などを行なっているのだそうです。

しかし、もとから部下やスタッフとのコミュニケーションが得意だったわけではなく、人間関係ではかなりの苦労を重ねてきたのだといいます。つまり本書は、そのような経験があったからこそ生まれたもの。組織のリーダーに求められる職場コミュニケーション能力、つまり「部下やスタッフとの対話能力」を上げる技法について、どんな職業にも通用する技法がわかりやすくまとめられています。

きょうは第3章「相手の関心事を『聞く』技法 リーダーシップの要は『対応の仕方』」から、いくつかの要点を抜き出してみたいと思います。

「心のケア」がない会話は、コミュニケーションでもなんでもない

著者いわく、「心のケア」とは、部下やスタッフの凝り固まってしまった心をゆるませること。イライラしたり、傷ついたり、緊張したり、愚痴や不平不満ばかり出てくるのは、心が凝り固まっているからだというのです。しかし心が凝り固まると、柔軟に考えられなくなり、物事の見方や考え方まで硬化してしまうもの。

だからこそ、心をゆるませてあげれば、そうしたことから解放されるというわけです。そこで、文句や愚痴、悪口や不平不満ばかり言っている部下がいたら、彼らの言葉の本当の意味をよく考えてみることが大切なのだと著者は強調しています。

「リーダーがわかってくれない」

(…自分のことをわかってほしい! 認めてほしい!)

「ウチの上層部はバカばっかり!」

(…なんでオレの意見を採用してくれないの! オレが大変なのわかってよ!)

「私なんていいように使われているだけ!」

(…私の能力をもっと認めて! もしくは、能力があるからうまいように使われちゃっている、私に気づいて!)

「上司はアイツのことばかり贔屓している!」

(…私のがんばりに気づいて! 上司は私のことをわかってくれていない!)

(以上、100〜101ページより抜粋)

ここからも推測できるように、ほとんどの愚痴や悪口、不平不満をよく聞いてみると、結局は以下のような想いに集約されるというのです。

「自分のことを大切にしてほしい」

「自分のことをわかってほしい」

(102ページより)

みんな、自分のことを「わかってもらいたい」「大切にされたい」「認められたい」と切望しているもの。そのため、誰かにわかってもらえるだけで、心が癒されるし、それがもしリーダーなのであれば、その人を信頼するようになり、「ついていきたい」と思うようになるのだといいます。

なぜなら話をちゃんと聞いてもらえるだけで、部下やスタッフは「認めてもらっている」「大切にされている」と思うようになるものだから。つまり、社内やお店の人間関係の問題は、話をちゃんと聞いてあげるだけで解決するケースが多いということです。(94ページより)

聞き上手は「気持ちよく話せる」状況をつくるのがうまい

部下やスタッフと一緒に仕事をしていると、「あれ? なにかいつもと違うな」と感じることがあるもの。それがプラスの方向のものであれば、うまくいっている証拠ですから問題はないでしょう。

しかし、「あれ? なにかちょっとおかしいな」とマイナス的に、もしくはプラスでもマイナスでもないような感じがする場合があります。それは、潜在意識でいつもと違うなにかを感じているから。「あれ?」と思うのは、“そう思わせるなにか”が必ずあるということです。

そして「あれ? 大丈夫かな?」と感じたら、たいていのリーダーは「大丈夫か?」と声をかけるはず。ところが部下やスタッフは、その問いに対して「大丈夫です」と答えて終わり、というケースも少なくありません。そういった場合は、そこで済まさず、少しでもいいから必ず時間を見つけて話を聞くようにすることが大切。理由は、必ずなにかがあるから。(115ページより)

効果的なリスニング、6つのポイント

でも著者は、これまで何千人もの人を見てきた結果、話の聞き方ができていない人があまりにも多いと感じるのだそうです。意外と話し方は上手なのに、聞き方ができていないということ。そこで著者は、部下やスタッフの話を聞く際に効果的な6つのポイントを紹介しています。

心を込めて「積極的に」聞く

心と体をしっかり相手に向け、体の力を抜きリラックスした状態で聞くということ。なお、簡単に「ラポール」(心が通じ合う状態)が築ける方法は、「小さな子どもと握手しているイメージ」で聞くことだそうです。また、受け身でいるのではなく、積極的に(能動的に)、心を超えて聞きに行くことが重要だといいます。

「結論から言え!」は絶対禁句

部下やスタッフに対して「で、なにが言いたいの?」「だから、結論は?」などと言いたくなることもあるかもしれませんが、それはNG。萎縮して大切な用件を伝えなかったり、それが度重なれば「どうせ、うちのリーダーは話を聞いてくれない」と、心を閉ざしてしまうかも。

実際のところ、リーダー側が無駄に力むから、相手も力み、反発するようになるわけです。もしうまく話せなかったとしても、ちゃんと聞いてあげることで、相手は「自分は大切にされている」と感じるもの。

相手を否定しない

否定した瞬間、相手は心を閉ざしてしまいます。たとえば「その考え方は違う」などと言えば相手は反論しないでしょうが、問題の解決にはならないわけです。それどころか否定をしたら、より反発を招くかもしれず、本音を話してくれなくなるということです。

「わかってあげよう」を優先する

先に触れたとおり、愚痴や悪口、不平不満は「私のことをわかってくれない」というような不満の想い。そこで「わかってあげよう」「理解しよう」と思って聞くべきだということ。こちらがわかってあげれば、問題は簡単に解決できるようになるといいます。

話の最後まで「答え」を言わない

部下やスタッフが話している途中で、「そんなの、こうすればいいじゃん」「いやいや勘違いだから、そんなの」などというようにすぐ「答え」を言うべからず。それでは相手は「わかってもらえなかった」と思うだけで、問題は解決しないから。「答え」を言うのはいいけれど、話を最後まで聞いてからにすることが大切だということ。

「存在意義」を実感してもらう

話の最後に、その人が役立っているところ、会社やお店に必要だと思うところ、感謝の気持ちやほめるところなど、「必要としている」旨のハッピーワードを伝えるということ。会社やチーム、お店にとっての「その人の存在意義」を示すわけです。

他にも「ほめる技法」「信頼を勝ち取る技法」「自分で考えて動くように育てる技法」「叱る技法」「伝える技法」と、目的に応じたメソッドが紹介されています。つまり実践的なので、著者がいうように、どんな職種に就いていたとしても応用することができるでしょう。部下とのコミュニケーションに悩むリーダーなら、読んでみる価値はありそうです。

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2018年1月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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