誰にでも苦手な相手は存在する。「アドラー心理学」を日常生活に役立てる方法

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誰にでも苦手な相手は存在する。「アドラー心理学」を日常生活に役立てる方法

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

タイトルからもわかるとおり、『悩みが消える「勇気」の心理学 アドラー超入門』(永藤かおる著、岩井俊憲監修、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、心理学者アルフレッド・アドラーが提唱した考え方をわかりやすく解説したもの。

著者は心理カウンセラーですが、かつては仕事に疲れはて、職場の人間関係もこじらせて上司や同僚と対立し、精神的に追い込まれていたのだそうです。そんなときに知ったのが、アドラー心理学。知れば知るほど、自分の凝り固まった心や考え方が、少しずつ解きほぐされていくような感覚を覚えたのだとか。そしてそれが契機となって、アドラー心理学を伝えていく側になったというわけです。

本書は、師である岩井俊憲(筆者注:日本におけるアドラー心理学の第一人者)と私がこれまで記した著書から、特に初めてアドラー心理学にふれる人に向けて、そのエッセンスを平易な文章と図解でまとめたものです。いわばアドラー心理学のベスト版。アドラー心理学のすばらしさが伝わり、あなたの人生が好転するきっかけになる本だと信じて書き下ろしました。(「はじめに 『変わりたい』『幸せになりたい』と願うすべての人に」より)

アドラー心理学は、その知識を学ぶだけでも価値ある心理学だと著者はいいます。対人関係や自分の感情についての思い込みを破り捨てるきっかけになるというのです。その一方、アドラー心理学は厳しい側面もある心理学。自分をつくったのは自分。だから他人のせいにはせず、いまの状況を招いた責任を受け入れる必要があると考えているというのです。

この点を踏まえたうえで、Chapter 6「アドラー心理学を日常生活に役立てよう」から、いくつかの要点を引き出してみたいと思います。

怒りやイライラと上手につきあう

POINT1. 怒りの感情は抑えることができる

POINT2. 怒りの奥には別の一次感情がある

「怒りは突発的に出てくるものだから、抑えることはできない」と考えている人がいるかもしれませんが、アドラー心理学ではそうした考え方を否定しているのだそうです。つまり、怒りは制御可能な感情だということ。

たとえば、親友だと思っていた友人に、影で悪口を言われていたとします。しかし、そのことで「ふざけるな!」と感情を爆発させそうな状況で、会社の取引先の重要顧客から電話がかかってきたと思ってみてください。そんなときは当然ながら、「いつもお世話になっています」と明るい声で対応するはず。

さっきまで抑えきれないと思っていた感情は、取引先から電話がかかってきたとわかった瞬間、引っ込んでしまうものだということ。もしも怒りが抑えきれないものであるなら、取引先に対しても同じ勢いで怒りをぶつけるはずだということです。しかしそうならないのは、人間は相手を選んで怒りという感情を使っているから。つまり、怒るのにも目的があるということ。

実は、“怒りの奥”には別の感情が隠されているのだそうです。怒りは二次感情であり、そもそも怒りを抱く理由となった一次感情が別に存在するということ。だからこそ、その一次感情に気づくだけでも、コミュニケーションはよりスムーズになるというわけです。

親友に悪口を言われて怒ってしまう話に関していえば、怒った原因は親友に対する「落胆」であったはず。信頼している親友なら絶対に悪口を言わないはずだという「期待」があるからこそ、その期待を裏切られた「落胆」の気持ちが生まれ、二次感情である「怒り」になったということ。

そこで「怒りが抑えられない」と感じた時には、自分の感情の裏側にある別の感情を、客観的に見つめることが大事。そして自分の一時感情に気づいたら、自分を主語にした“I(私)メッセージ”で一次感情を伝えるべきだといいます。

「(私は)陰口を言われてショックだったよ。今後は直接言ってくれるとうれしい」(184ページより)

相手に怒りの感情をぶつけるより、こちらのほうがはるかに効果があるわけです。(182ページより)

SNSで気が休まらない悩みの対処法

POINT1. 他人の投稿や評価はどうにもできない

POINT2. 自分のできることに気をつかう

SNSはいまや私たちの日常生活に欠かせないもの。しかしその一方、気疲れしてしまうという悩みを多く見受けられるようになったのも事実。便利なツールではあるけれど、精神的に悪影響があるのであれば、それは建設的な使い方だとは言えないでしょう。

では、なぜSNSで疲れてしまうのでしょうか? 著者は、気疲れの原因のひとつは、他人の評価を気にすることにあると指摘しています。

「自分の書いていることを他人はどう思うだろうか」

「『いいね!』を押さなければ」

「他人が友だちや恋人と楽しそうにしている投稿はねたましく感じてしまう」

など、自分が他人にどう見られているかを気にしたり、自分と他人をくらべるから疲れてしまうわけです。しかし、SNSとの上手なつきあい方において大切なのは、「課題の分離」という概念なのだそうです。わかりやすくいえば、自分の課題と他人の課題とを分けるということ。

どのような投稿をするかは自分の課題。他人を傷つけない、あまりネガティブなことを書かないなど、基本的なマナーを守ることは必須だということです。とはいえ、自分が投稿した記事を見てどう思うかは他人の課題。どのような投稿にも、それを不愉快に感じる人もいれば、評価する人もいるのですから。

もちろんそれは、他人の投稿に関しても同じ。自分が「そんな投稿をしてほしくない」と感じても、他人が書く内容を自分がコントロールすることはできないということ。しかし、自分でコントロールできることはいくらでもあるもの。たとえば、SNSをやらない、投稿は親友のものだけを見るなどがそれにあたるというわけです。

他人と自分のライフスタイルは違うもの。友人がたくさんいる人をうらやましく思ったなら、自分の友だちに対する価値観を見つめなおすことが大切だということです。

自分にとってはひとりの時間が大切なのだと気づけば、友達との時間を楽しむ人をねたむ必要がなくなるもの。自分もたくさんの友人とワイワイ過ごしたいと思うのならば、その劣等感をバネにして、友人を増やす努力をすればよいということです。(190ページより)

苦手な相手にイライラする悩みの対処法

POINT1. 誰にでも苦手な人は少なからず存在する

POINT2. 苦手な人とは適度な距離を保とう

会社で働く場合、会社は選べたとしても、どの部署でどんな人と働くのかを選ぶことは不可能。もちろん学校でも同様で、学校を選ぶことはできても、クラスやクラスメイト、先生を選ぶことはできないわけで、それは仕方のないこと。

そのため生まれがちなのが、「職場やクラスに好きではない人がいて、イライラする」「苦手な人とどう接していいかわからない」というような悩み。なかには、「あの人さえいなければ、うまくいくのに…」と、相手を恨んでしまうこともあるかもしれません。

しかし、学校や会社を選びなおしたとしても、苦手な人がいなくなることはありません。人と人との相性には、「2対6対2」という法則があるのだそうです。つまり相性のよい人が2割、普通の人が6割、悪い人が2割だということ。つまり、どんな共同体に所属していたとしても、2割は相性のよい人、6割は普通の人、2割は相性の悪い人だということ。

だとすればこれは、自分に苦手な人がいるように、「誰もが2割程度の人を苦手としている」と解釈できることになります。誰とでもうまくつきあっているように見える人でも、その実は苦手としている人がいるということ。

そこで、苦手な人とのつきあいに悩んだら、「どこにでも、誰にでも苦手な人がいるもの」という事実を思い出せば、ずいぶん気が楽になるだろうと著者は記しています。

相性の法則性を前提にすると、どんなに努力しても、苦手な人をなくすことはできないという結論に達します。実際、アドラー心理学では苦手な人を好きになることをすすめているわけではありません。

しかし、苦手な人とうまく付き合うヒントは提示しています。それが共同体感覚というキーワードです。共同体感覚を持っていれば、苦手な人も同じ共同体に貢献する仲間としてリスペクトすることができるのです。(199ページより)

自分に嫌な態度をとる人に好意を持つのは難しいもの。しかし、それに反発して自分も嫌な態度をとってしまえば、関係は悪化しても当然。心の平穏のために、「どんな相手でもリスペクトし、共同体に貢献するためにつきあう」のだと考えるべきだということ。礼儀を欠かさない態度を貫けば、それ以上に関係が悪化することはないというわけです。(198ページより)

このように簡潔に、わかりやすくまとめられているため、とても理解しやすい内容。「アドラー心理学に興味はあるけど、どこから入ったらいいのかわからない」と感じていた方のための入り口として、最適な1冊だといえます。

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2018年1月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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