『島耕作の事件簿』
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【聞きたい。】樹林伸さん『島耕作の事件簿』 今回は巨悪を追う“探偵”役
[文] 産経新聞社
主人公がついに会長の座に上り詰めた漫画『島耕作』シリーズ。今回の役職はまさかの“探偵”役だ。絵は作者の弘兼憲史さんだが、ストーリーは『金田一少年の事件簿』をはじめ、人気作品の原作を務めるヒットメーカーが担当した。
「最初に編集者からコラボの提案を聞いたときは驚きましたね。僕は学生の頃から弘兼さんのファン。原作を手掛けることができ、感無量です」
物語の舞台はバブル末期の平成2年。見知らぬ女性の部屋で目覚めた課長・島耕作は、ベッドの上で変わり果てた姿となった女性を発見する。絶体絶命の状況に追い込まれた島耕作は逃亡生活を送りつつ、この事件の背後に隠された“巨悪”を追う。「(米ドラマ『24』の主人公)ジャック・バウアーのような島耕作を楽しんでもらえれば」
時代設定の理由について、「(60代の)会長が事件を追うのは体力的に難しい」と語る。「それに、島耕作の若い頃は時代そのものが事件。バブル経済崩壊に、不動産の地上げ…。あの時代の空気を物語として残したかったんです」
島耕作シリーズは役職を変えつつ、35年続く長期連載。そのすごさについて「同じことを繰り返さないところ。長く続く作品にありがちな『中だるみ感』がない」と語る。「島耕作も年を取り、自分の歩みと重ねられるのも魅力ですね」
早稲田大卒業後、講談社に入社。複数の筆名を使い分け、原作兼編集者として『サイコメトラーEIJI』などを手掛けた。退社後もヒット作を連発。趣味のワインを題材にした『神の雫』はロングセラーとなっている。
多彩なアイデアの源は「好奇心と取材」。今後はVR(仮想現実)や仮想通貨をテーマにした作品も構想している。「ストーリーに必要なのは『意外性』。そして、読者はもちろん、自分やスタッフが楽しむことも大切です」。その好奇心は尽きることがない。(講談社・570円+税)
本間英士
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【プロフィル】樹林伸
きばやし・しん 昭和37年、東京都出身。代表作に『金田一少年の事件簿』など。昨年、小説『東京ワイン会ピープル』を刊行。