横溝正史、高木彬光も「将棋」テーマのミステリ 3冊

レビュー

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  • 将棋推理 迷宮の対局
  • 将棋殺人事件
  • ダークゾーン 上

書籍情報:openBD

横溝正史、高木彬光も「将棋」テーマのミステリ

[レビュアー] 若林踏(書評家)

 藤井聡太四段の連勝記録更新、羽生善治竜王の「永世七冠」達成など、将棋関連のニュースが注目を集めた二〇一七年。高まる将棋熱を受けてか、ミステリ界でも『将棋推理 迷宮の対局』(山前譲・編)が刊行された。横溝正史、高木彬光といった推理作家を中心に、将棋にまつわるミステリ作品を集めたアンソロジーである。

 収録作中のお薦めは山村正夫「詰将棋殺人事件」と斎藤栄「将棋道場殺人事件」だ。前者はプロ女流棋士の小柳カオリが探偵役を務め、アマチュア棋士が殺害された事件を棋士ならではの鋭い洞察力で解き明かす。探偵役のユニークさもさることながら、人間消失の謎と将棋を絡めた巧妙なトリックが印象深い。

「将棋道場殺人事件」は殺された将棋道場の経営者が遺したダイイングメッセージの解読に、刑事たちが挑むという話である。将棋のほかに俳句も重要な鍵となるなど、ダイイングメッセージものとしては相当に凝った謎解きが楽しめる作品である。犯人当て小説としても思い切ったアイディアが使われているので、真相を見破るのに挑戦してみるのも一興だろう。

 将棋を扱った本格謎解きミステリと言えば、竹本健治将棋殺人事件』(講談社文庫)が必読である。六本木界隈で広がる「恐怖の問題」と呼ばれる都市伝説、土砂崩れによって発掘された二つの死体、詰将棋の問題の盗作疑惑が複雑怪奇に絡み合う。登場人物のひとり、天才少年囲碁棋士の牧場智久とともに読者が見るのは、論理、幻想、狂気が入り乱れるカオスな世界である。

 棋士を主役に据えたミステリでは、貴志祐介ダークゾーン』(角川文庫、上・下巻)をお薦めしておこう。と言っても本作で主人公が戦うのは将棋ではない。火蜥蜴(サラマンドラ)、鬼土偶(ゴーレム)といった怪物の姿に変えられた人間たちが駒となり、赤と青の陣営に分かれて戦う異次元の頭脳バトルだ。ホラー、SF、本格ミステリなど多様なジャンルを横断する著者だからこそ書き得た、異色のゲーム小説である。

新潮社 週刊新潮
2018年2月1日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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