口下手・内向型がうまくコミュニケーションをとるコツ

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口下手・弱気・内向型のあなたのための 弱みが強みに変わる逆転の心理学

『口下手・弱気・内向型のあなたのための 弱みが強みに変わる逆転の心理学』

著者
神岡真司 [著]
出版社
清流出版
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784860294724
発売日
2018/01/22
価格
1,404円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

口下手・内向型がうまくコミュニケーションをとるコツ

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

自分を「弱い存在」と思うばかりでは、進化がありません。

世の中で、「自分より強い存在」に見える人は、大勢いるように見えますが、実はそういう人たちも、周囲に「自分より強い存在」を強く認識し、「自分は弱い存在」と考えていたりするものです。

自分を弱いと思うあなたの見方は、あなたの思考にすぎません。

人間関係に、「絶対的な価値観」などないからです。(「プロローグ 口下手・弱気・内向型のあなたのための逆転の心理学」より)

口下手・弱気・内向型のあなたのための 弱みが強みに変わる逆転の心理学』(神岡真司著、清流出版)の冒頭には、こう書かれています。

「自分より強い存在」に思える人でも、同じように「自分より強い存在」と感じていることもあるということ。そこで本書では、「内向型の自分をうまく生かしていく方法」と、「人間関係において相手との関係性が逆転できる方法」という2つのアプローチを行なっているのだそうです。

そんな本書の第2章「『弱み』を『強み』に変える逆転心理術」から、要点をピックアップしてみたいと思います。

「好き」と「嫌い」のメカニズムを知ろう

内向的な人が相手の懐に入るためには、人が誰かを好きになったり、嫌いになったりするメカニズムを心得ておくことが大切。

人が誰かを好きになるのは、相手を安心できる「味方」と認識し、共感できるところがあるからです。

嫌いになるのは、相手に脅威を感じて「敵」と認識し、共感できないところが多いからです(54ページより)

たとえば実際に会ったことがなくても、テレビに出てくるタレントなどに対しては「好き」や「嫌い」の感情が湧くことがあるもの。好きなタレントに対しては、容姿や言動に好感が持てて、共感できるものがあったり、嫌いなタレントの場合は、その逆になるわけです。

しかし、嫌いなタレントでも、急に好きになる場合があるといいます。それは、その人の好ましい面を発見したり、自分と同じ趣味を持っていたりする場合。心理学では、「共通項・類似性の原理」と呼ばれる現象だそうです。

相手に自分と共通するものや、似たところを発見すると、「味方」と安心して共感してしまうのが人間。同じ仲間のように安心感が得られるからこそ、相手に好意を持つということ。「好き」「嫌い」という感情には、このようなメカニズムが働いているというのです。(54ページより)

「近似性・類似性・共通項」で好意が生まれる

つまり人は、相手との間に共通項や類似性がまったくないと、会話が盛り上がらないばかりか、相手に嫌悪感すら覚えてしまうものだということ。

たとえば「猫が好き」という相手に、「猫は嫌いだし、そもそも動物に興味がなくて、かわいいと思ったことがない」などと言うと、険悪なムードが漂い始めても不思議ではありません。共感できるところがひとつもないと、安心できる相手ではなくなるということです。

同じように、学校のクラスメートより、部活やサークルなどを通じたメンバーのほうが仲よくなりやすいのも、好きなことを共有しているから。あるいはサークルなどで恋愛感情が湧きやすいのも、お互いが共感しやすい環境にあることが影響しているから。

したがって、誰かと親しくなりたければ、相手の好きなコトやモノを事前に探っておいて、会話の中で「実は、○○が好きで…」などというと、急に盛り上がって仲良くなれるものなのです。(57ページより)

そのため出世したい人は、直属の上司の好きなコトやモノに自分も合わせておくと、上司から親近感を覚えられる可能性があると著者。また、いまは少数派ではありますが、スモーキングルームで語り合う喫煙者同士も、意外な連帯意識で結ばれていたりするものだといいます。つまりこのメカニズムは、幅広い分野で働くものだということ。(56ページより)

「気の毒な事情」での共有体験があれば相手はやさしくなる

口下手で弱気に見える内向型の人は、あまり自分のことを語りたがらないもの。そのため、自分という存在を周囲から見えにくくしているといいます。すると当然ながら、誰かと共通するものがあったとしても、相手に気づいてもらえません。

それどころか口が重いと、誰かと共通項や類似性を持つことを伝えることも不可能。だからこそ、口下手で内気な人こそ、「共通項・類似性の原理」を意識していくべきなのだといいます。

なぜなら、パワハラ上司のみならず、自分につらく当たってくる先輩や同僚などに対し、「共通項・類似性の原理」は「弱者戦略」としてもきわめて有効だから。たとえば自分につらく当たる暴君課長がいるとしたら、その課長に対して自己開示してみるのもひとつの手。

たとえば、上司と自分には、生い立ちや境遇が苦しかったという共通点があったとします。そうした場合、暴君課長がそのことを知ると、そこに共通項が生まれ、パワハラは少なくなっていくだろうというのです。なぜなら弱気部下の姿を通じ、自分を見るような「投影」が生じるから。

「共通項・類似性の原理」が働く場合でも、このように気の毒な境遇や、同情すべき事情が共通している場合、とりわけ強く親近感を覚えるということ。そのため以後は「援助行動」の作用も無意識に働き、この部下に対してなんとか目をかけようという意識にもつながっていくというのです。

同じ病気で苦しんでいたり、貧困体験なども場合でも同じ。「共通項・類似性の原理」を働かせるうえで、このように「弱者の連帯」を刺激できるようなことがらがあったら、自己開示して伝えていくことが大切だといいます。(58ページより)

「似ている・同じ」が共感を呼び「好意」を育む

部下が上司と仲よくなっていく過程で重要なのは、「単純接触の繰り返し」と「共通項・類似性の原理」のセオリー。ちなみにこれは、男女間の交際においてもまったく同じだと著者はいいます。男女が仲よくなるためには、コンタクト(接触)が多くないと、お互いが馴染んでいかないから。

しばらくすると、お互いが似ているところ、共通項に気がつきはじめるもの。そして共感できるところが次々と見つかっていくにしたがい、お互いの相手への肯定的感情が増え、恋愛モードに入っていけるというわけです。

ところが、お互いに共通するところがなかったり、共感できることがないと、「この人は自分に合わない」と悟ることになるもの。生育環境がまったく違う、生活スタイルが違う、趣味や嗜好が違う、性格も似ていない、なにからなにまで異なっていると、交際に入っていけないということ。

そのため、「相手が好きだけど自分が嫌いなモノ」があったとすれば、自分も相手に合わせて好きになったりすることもときには必要。また、場合によってはその逆もあるということ。たとえば上司が日本酒党だったとしたら、部下も日本酒党になるなど。(84ページより)

やがてお互いの「相違点」も明らかになってくる

こうすることで上司と部下との「好意」と「信頼」の関係は深まっていくわけですが、お互いを知る過程で、徐々にお互いの「異なる点」も明らかになってくるもの。とりわけ、能力やスキルといった部分では、ギャップも大きくなるといいます。

※ 上司は、業務遂行能力における経験値が高く、部下は低い。

※ 上司は、英会話が得意でも、部下は英会話が苦手。

※ 上司は、下戸で主席が苦手でも、部下は酒豪で座持ちがうまい。

※ 上司はパソコンが苦手でも、部下はパソコンが得意

(86ページより)

こうしたお互いの違いが明らかになっていく過程で重要なのは、相手をサポートする姿勢。一方に得意なものがあるからといって、それを鼻にかけていたのでは関係性にヒビが入って当然。スキルの優位なほうが、劣っているほうを全面的にフォローする姿勢が肝になるということです。(86ページより)

「相補性」がはたらきはじめると強固な関係が築ける

先に触れたとおり、人間関係は最初の段階においては「似たところ・共通項」がたくさんあることで、親しみが湧き、お互いに「好意」を醸成させるもの。しかし一定の信頼関係ができた段階になると、お互いの「異なる点」も認識していくようになるわけです。

そこで、お互いに「自分の足りない部分を相手に補ってもらう」「相手の足りない部分を自分が補う」という関係に発展するということ。この段階になると、上司が部下を守り、部下も上司を守る関係ということになりますから、がっちりスクラムを組み、困難に際してもお互いが協力しあって立ち向かうという理想的な関係が構築されてきたといえるわけです。

このように、お互いが「先生になったり、生徒になったりする関係」を心理学では「相補性(そうほせい)の原理」と呼び、次のような人間関係の5つの深化過程において、第4段階に位置づけているのだそうです。

《第1段階》出会い……第一印象の形成(安心か脅威かのイメージ形成)

《第2段階》親近化……単純接触の効果(よく見かける・時々言葉を交わす)

《第3段階》定着化……共通項・類似性の原理(似ている・同じなどの近似性)

《第4段階》安定化……相補性の原理(得意・不得意分野を補い合える関係)

《第5段階》深化……自己開示の効果(悩みやプライバシーを打ち明ける関係)

(88ページより)

こうした段階を手順よく踏んでいくことで、口下手で弱気に見える内向型の人も、スムーズな人間関係を築いていくことができるのだといいます。そういう人は引っ込み思案になりがちですが、適宜自分からもメッセージを発信していかないと、相手には届きません。つまり大事なのは、自分の個性を見えにくくしないことだという考え方です。(87ページより)

「ビジネス心理研究家」である著者は、最新の心理学理論をベースにした法人対象のモチベーションセミナー、コミュニケーショントレーニング、人事開発コンサルティングなどを行なっているという人物。そうした実績を軸としているだけに、本書はとてもわかりやすい内容になっています。「口下手だ」「内向型だから」と悩んでいる方は、手にとってみてはいかがでしょうか?

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2018年2月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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