勉強への抵抗をなくすには? Phaさん流「勉強する時に大切な3つの軸」とは

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人生にゆとりを生み出す 知の整理術

『人生にゆとりを生み出す 知の整理術』

著者
pha [著]
出版社
大和書房
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784479796206
発売日
2017/12/16
価格
1,430円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

勉強への抵抗をなくすには? Phaさん流「勉強する時に大切な3つの軸」とは

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

僕は小さい頃から、ほとんど何かをがんばったことがない。

自分が人より根性や体力がないのには自信がある。みんなで一緒に何かをすると、いつも一番先に「疲れた」とか「だるい」と言ってサボり出すタイプだ。

決して勤勉じゃないし、決まった時間に起きられないし、部屋も散らかっているし、ちょっと活動するとすぐに横になって休んでしまう。

だけど、そんな僕が今までの人生で、京大現役合格をしたり、会社を辞めて無職になってからもブログが人気ブログになって、5年間で5冊の書籍の出版に至ったり、シェアハウス「ギークハウス」の運営を10年間続けているなど、大体のことはなんとなくやっているうちにうまくいった。

うまくいった理由はたぶん、「人より我慢強さがないからこそ、しんどいことを避けてうまくやるやり方をしっていた」から。そして、たまたま人生の早い段階で、「勉強を楽しむやり方を身につけることができた」からだ。

(「はじめにーーなんとなく楽しんでいるやつが一番強い」より)

こう明かしているのは、『人生にゆとりを生み出す 知の整理術』(pha著、大和書房)の著者。上記のように自由な生き方をしていることで有名な人物ですが、最新刊である本書のテーマは、「がんばらずに、なんとなくうまくいく勉強法」。自身が普段から実行しているそのメソッドを伝えることにより、もっと自由にラクに生きられる人を増やしたいと考えているのだそうです。

勉強というのは、知識を整理して自分のなかに取り入れる行為。そして、勉強する能力さえ身につけておけば、いくつになっても、どんな状況になっても、「わりと人生やっていけるもの」だというのです。

知識があれば避けられる不幸が、人生には少なくないと著者。しかし残念ながら、たまたま知らないばかりに苦労し続けてしまっている人が多いのも事実。

だからこそ、

・普段から知識や情報に触れる習慣を持っているかどうか

・困ったときに自分でちょっと調べてみるという行動パターンを持っているかどうか

・わからないときは、どこでどういうふうに質問すれば答えが見つかるかを知っているかどうか

など、「勉強への抵抗のなさ」を身につけておくことが重要。そうすることによって、人生は変わるものだという考え方です。

ところで著者には、なにかを勉強する際に大事だと考えている3つの軸があるのだそうです。そこできょうは、本書の核というべきそれらを確認してみることにしましょう。

その1 「習慣の力」でやる

勉強でも仕事でも、どれだけ根性を出してがんばるかということよりも、習慣や環境の力を利用し、無理なくなんとなく続けることが重要だと著者は主張します。無理に力を入れてなにかをしようとしても、長期的にみるともたないもの。逆に、できる人ほど、力を入れずにいろいろなことが回っていく習慣や環境を形づくっているというのです。

だから最終的には、がんばる人よりも、「なんとなく」「楽しみながら」やっている人が残るようになっているのだとか。

とはいえ人間にとって、普段なんとなくやっている習慣を変えるのは難しいものでもあります。

古谷実の『グリーンヒル』というマンガに、「人類最大の敵は『めんどくさい』だ」という言葉が出てくる。

「めんどくさい」とか「惰性」とか、今までの習慣をそのまま続けようとする惰性、こいつらの力はかなり強い。勉強でもダイエットでも何でも続かないのは、大体こいつらのせいだ。(8ページより)

自制心があって努力家の人間なんてごく一部。著者は、自分自身も含め、ほとんどの人間は怠惰でめんどくさがりで飽きっぽいものだと指摘しています。だから、なにかをやろうとしてもめんどくさくて続かなくなるということ。

しかし、習慣は変えられるもの。そして、いったん変えてしまえば、普段から努力しなくても行えるようになるものでもあるという考え方です。

重要なのは、人の行動や習慣というものは、自分を取り巻く環境に大きく左右されるということ。そして、なかでも重要なのが「まわりにいる人」だといいます。まわりに勉強している人が多く、普段からそういう人たちを目にしていると、自分も知らず知らずのうちに「勉強しなきゃ」という気になるものだというのです。(6ページより)

その2 「ゲーム感覚」でやる

「なんとなく楽しんでいるやつがいちばん強い」とはいえ、実際のところ、「勉強を楽しむのは難しい」と思い込んでいる人も少なくないはず。けれど、「これがゲームだ」と思えば、だいたいのことはなんでも楽しめるものだと著者は記しています。

勉強はゲームだし、仕事もゲームだ。試験の点数や順位や給与や売上高はゲームのスコアだ。

もちろん人生だってゲームだ。人生は世界最大規模でやろうと思えは何でもできる自由度MAXの超オープンワールドゲームだから、プレイできる限り、思う存分楽しまないと損だ。(15ページより)

いいかえれば、気の持ちようでどんな仕事でもゲームのようにこなせるし、どんなゲームでもめんどくさくて嫌な作業になりうるということ。そしてゲームとして楽しむときに必要なものは、「余裕」と「達成感」だといいます。なにかを楽しめないときは、この2つを持てていないことが多いというのです。

まず、楽しむためには「余裕」が大切。気持ちがいっぱいいっぱいな状態だと、楽しめなくなって当然。そして、なにかを楽しむためには、一歩引いた視点から状況を冷静に見るようなことが必要なのだといいます。

たとえば人生で苦境に陥っているときも、「なかなか難しい戦局だな、この状況でできるだけ被害が少ない最前手を指すにはどうしたらいいか」とゲーム感覚で考えるべきだということ。

そして、ゲームとして楽しむために欠かせないのが「達成感」。ゲームを毎日続けられるのは、楽しむための細かい仕組みが用意されているから。しかし勉強の場合、そのような仕組みは用意されていません。そこで、「ある程度進んだら自分にご褒美をあげる」「やるべきことが終わったら、それをかいたメモをグシャグシャに破り捨てる」など、自分で達成感や爽快感を感じる仕組みをつくってやる必要があるという発想です。(14ページより)

その3 「楽しいことだけ」やる

基本的に勉強というものは、自分が楽しいと思うことだけやればいいのだと著者はいいます。これは勉強に限らず、すべてのことに言えるとも。

野菜をしばらく食べていないとすごく野菜が食べたくなってきて、そういうときに野菜を食べるととてもおいしく感じる。無茶苦茶喉が乾いているときに水を飲むとすごくおいしい。

人間の体は、自分に必要なものはおいしく楽しく感じるようにできているのだ。

知識についても同じで、そのときの自分に本当に必要な知識を得る作業は楽しい。もし勉強が楽しくないのだとしたら、其の知識は自分には必要ないのかもしれない。

本当は必要ないのに、「人に言われたからやる」とか「みんながやっているからやる」という理由でやっているからじゃないだろうか。

そんな勉強は、やらなくていい。自分が本当に楽しいと思って、本当に知りたいと思うことだけ学ぶようにしよう。(21ページより)

という考え方は真理ではあるけれども、楽しいことだけやってうまくいくなら苦労しないというのも事実。「楽しいことをひたすらやったら、成果が上がった」というのは理想的。しかし、現実はそんな理想どおりにいかないわけです。

大事なのは、そうした理想的な状態の感覚を覚えて、その状態を目指しつつも、理想どおりにいかないときもなんとか凌いでいくという技術だ。(22ページより)

そもそも、なにかを調べたりするのを楽しいと思うためには慣れが必要。そこでとりあえず、「本を読むこと」「なにかを調べること」に慣れ、それを楽しいと思える感覚を身につけようと著者は提案しています。

調べる内容は、なんでもOK。大切なのは、調べるのが苦ではないような、自分が興味を持てる内容を選ぶこと。

なんでもいいから調べて、それを自分なりにノートにまとめたり、実戦に活かしたりすること、そして、その一連の作業になれること。それこそが、勉強を楽しむ第一歩だと著者はいいます。(20ページより)

これら3つの軸を基本的な考え方として、以後の章では“どんなふうにラクをしながら勉強を進めていくか”が紹介されています。特筆すべきは、著者は「勉強という趣味のよいところは、一生楽しめて役に立つところだ」という著者の意見。

勉強を“趣味”と位置づけ、それを楽しめれば、可能性は大きく開けると主張しているのです。「勉強=苦しい」という考え方とは正反対の位置から学ぶことの意義を捉えているからこそ、そこに大きな説得力が生まれるわけです。

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2018年2月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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