【写真集】『border | korea』菱田雄介
[レビュアー] 篠原知存(ライター)
■似て非なる二つの国
かつて同じ国だった異国。北朝鮮と韓国で撮影した写真を、見開きの左右ページに並べる手法で、「分断」が人々にもたらしている現実を描き出す。
状況や構図が似たものをペアに組んでいるから、見る側はまるで「間違い探し」のように自然に相似点や相違点に視線を向ける。表紙にも使われている2人の少女の写真を例に取ると、差し込む光や背景までそっくり。だが、親和性は見かけだけで、撮影地は平壌とソウル。まったく違う社会で生きる他人で、たまたま同じ写真家の前に立ったにすぎない。
生まれたばかりの赤ちゃん、学生、軍人、僧侶、楽団員、新郎新婦、あるいは高層住宅群、広場、海水浴場…さまざまな人々や情景が次々に対比される。わずかな違いが、絶望的な隔たりのように感じられてくる。いや、逆にこれだけしか違わない-のだろうか。
写真家は記す。〈地図上に引かれた一本の線は、人間の運命をどう変えるのか?〉。静かな思索をもたらしてくれる秀逸なフォトドキュメンタリー。(リブロアルテ・5500円+税)
篠原知存