王道“お宝強奪者”で登場 しかし独自性に富む有望新人

レビュー

10
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ダウンサイド 強奪作戦

『ダウンサイド 強奪作戦』

著者
マイク・クーパー [著]/公手 成幸 [訳]
出版社
早川書房
ジャンル
文学/外国文学小説
ISBN
9784150414276
発売日
2018/02/06
価格
1,512円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

王道“お宝強奪者”で登場 しかし独自性に富む有望新人

[レビュアー] 香山二三郎(コラムニスト)

 日本のミステリー作家の多くは新人賞でデビューするけど、欧米には日本ほど新人賞があるわけではない。そんな中、アメリカのミステリー評論、編集界の大御所オットー・ペンズラーが主宰するコンテストで最優秀賞を獲得したのが本書である。

 もっとも本書以前にも著作があり、中短篇でも受賞歴を持つ強者。本書も素人離れした作品に仕上がっている。ジャンルでいえば、ケイパーもの。リチャード・スタークの悪党パーカーシリーズに代表される、強奪犯罪の顛末を描いた長篇だ。

 主人公フィンがニューメキシコ州の砂漠地帯で列車強盗を企てるプロローグからしてダイナミックだが、本篇はその七年後、刑務所を出たフィンがエミリーという美女に出迎えられるところから始まる。エミリーは七年前の事件にも加担していた投資家ウェスのアシスタント。彼はフィンに、倉庫に保管された希少金属ロジウムの山を隣りのスペースに移してほしいという。実はウェスのロジウムは偽物で、隣りに保管されている本物と入れ換えろというのだ。鉄道の貨物駅構内にあるその保管庫は壁が厚く警備も厳重だった。

 胡散臭い儲け話、難攻不落の保管庫というこのジャンルならではの設定でツカミはOK。結局フィンはその話に乗り、かつての仲間を集めにかかるのだが、一方同じ頃、鉄道会社の警察部長キーガンは超大型掘削機の中国への発送という大仕事について知らされていた。貨物駅には警察の機動隊も駆り出される予定だったが、その日――大晦日は奇しくもフィンたちの決行日と重なっていた。

 強奪ものとしては正統派だが、そもそも主人公からして重量物専門という特殊犯で、鉄道を絡めた点にも特徴あり。正統派でありながら独自性にも富んでいる。タイプは異なれど、ゴーストマンシリーズの鬼才ロジャー・ホッブズの夭折を嘆くこのジャンルのファンに、ぜひ読ませたい有望株の登場だ。

新潮社 週刊新潮
2018年2月22日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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